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欠けた世界の行く末 -4-

おはようございますー。

鉄扉挟んだ指が痛む今日この頃。

小難しいことは苦手です。
なので、普段どおりの行動にプラスして出来る限りの協力(節電や募金)をする事にしました。

協力は足し算です。1人1人の力は小さくても集まれば大きくなれます。


さて、本題は済みましたので、残りの蛇足部分に突入ですよ。
ペースがそれなりに上がっている恋姫の二次創作ですが、書くペースが上がったのではなく以前の構想の下書きに+αしているので早いのです。
まあ、下書きというよりはネタ張に近いものなんですけどね。

あ、そういえば、Web恋姫は張遼がでないので、震災前より放置状態になってますw
アホの子の文ちゃんだけでは、俺のやる気ゲージは上がりませんwww
節電協力にもなっていいので無期限停止ですね。

それでは、時間があればお付き合い下さいな。



卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回
回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍



 北郷の人柄と働きで村の人々にも信頼を得られてきたある日、張遼が近隣を荒らしている小規模の黄巾党を討伐に向かうことになり、その留守を北郷が守ることになった。

「村長、張遼は大丈夫だとは言ってましたが、やはりここは村の警備を厳重にしようと思います」
「ほっほっほ、北郷殿にお任せしますよ。好きにしてくだされ」
 村長は目を細めて北郷の提案をのんだ。
 村に来た頃は余所者のレッテルで村人から避けられていたのだが、張遼のお気に入りという立場を傘に着ずに真っ直ぐに向き合ったから。
 その上に高青の娘―順―を救ったことで、北郷は心から村に受け入れられていたのだ。
「……しかし、見違えましたな」と村長が切り出すと北郷は何をと驚きを隠せなかった。
「どうしたんですか?」
「見違えたなと思いましてな。来た頃はどこか頼り気が無いというか今にも消えてしまいそうな雰囲気を漂わせていたもので、正直すぐに村を出て行くのではないかと思っていたんですよ。ほっほっほっほ」
「酷いな~」
「それも過去の話。今では村人も北郷殿を頼りにしている。それはこのワシとて同じ」
「それはそれでプレッシャーですけどね」
「ぷれっしゃあ?」
「あ、いや、肩の荷が重いなぁってことで、あはは」
「それに、張遼殿もどこか以前の張遼様に戻っているというか……いや、これは忘れてくだされ」
「張遼が? 是非とも教えてください。俺、張遼の力になりたいですから」
 村長は少し躊躇ったものの北郷の瞳に押し込まれるように硬い口を開いた。
 語られるその内容は、北郷が想像していたよりも壮絶なるものだった。そして、それは過去――前にいた魏で北郷が心配していた出来事でもあったのだ。
 無法者が村で暴れて、張遼がそれを抑えたのはいいが、必要以上に相手を追い詰めた為に村長の孫が巻き込まれて死んだのだ。正確には無法者が近くの村人を傷つけようとしたので、張遼がその武器を弾き飛ばしたのだが、運悪く弾き飛ばされたその武器が小さな命を奪ったのだ。
 誰もが予想できない事故であり、村人は誰もそのことを責めなかったのだが、張遼自身が責めたのだ。
「張遼殿はその事で我々に罪の意識をもっているのだよ。天下に名を轟かせることの出来る御方だというのに、こんな村に留まってくれている。そして、その事に甘えているワシらがいる……」
「……村長」
「それが、北郷殿を連れてこられた時の張遼殿の表情が少し、ほんの少しだけ昔の表情に戻っておられた……ワシは嬉しかったのだよ」
「……」
「張遼殿は苦しんであられる……。我等が何を言ってもご自身を責められる。ですが、北郷殿が来て状況が少しずつ変わり始めた」
「俺が来て?」
「そう。村人にも張遼殿にも変化が見えてきた。その最たるものが今の状況ですよ」
「え?」
「今まで、村から離れる時には動員できる1割程度しか連れて行かなかったのが、今は4割は連れて出ている。北郷殿を信頼している証拠で、村人もその事に不安を持っていないのです」
「……」
「……北郷殿、張遼殿と一緒に村を出て行ってくれんか?」
「な、なんだって!? 話がつながりませんよ!?」
 慌てる北郷に村長が言葉を続ける。
「ほっほっほ。慌てない慌てない」
 先程までの暗い調子ではなく、いつもの村長の口調になり北郷を宥める。
「?」
「そろそろ、我ら村人が張遼殿から巣立つ時が来たのですよ」
「……」
「今回の黄巾党討伐から張遼殿が戻られたら話すつもりだったのだが、北郷殿の目にやられた」
「……」
「おそらく、張遼殿は納得されないでしょうが、その時は北郷殿も協力してくだされ」
「そういうことなら協力するよ。でも、いつか……いつか本当のことを話してもいいですよね? 村長のことだ憎まれ役をやるんだろう?」
「ほっほっほっほ。それはどうでしょうか? 北郷殿に憎まれ役をやって頂くかもしれませんよ?」
「そっちの方が気が楽でいいよ」
 北郷と村長がそんな約束を交わした夜に異変が起きた。


「村長ぁー!! 北郷様ぁ!! 黄巾党です!! 奴等がやってきました!!」
 寝ずの番をしていた若者が声を荒げて村の中を走り回る。
 寝ていた村人が続々と起きてきて、松明を灯し始める。武器を手に持ち予め決められた場所へと向かう村人達。
 村の外では馬の嘶きと怒号が飛び交うも警備兵の決死の防戦で村に侵入されるのを辛うじて防いでいた。

「黄巾党は今張遼殿が討伐に行っているではないか? どうしてここに来るのだ」
 村長が叫んでいた村人を捕まえて状況を聞いていた。そこへ北郷も駆けつけた。
「黄巾党が来たって、本当ですか?」
「そのようだ。今、村の東口で防戦しておる」
「どれぐらいいたんだ?」北郷が重要なことを聞き出そうとするのだが、返答したい村人も夜の闇では正確なことがいえないでいた。
「たぶん、50以上はいたと思います。それぐらい松明があったんで」
「それぐらいなら何とか防げそうだけど、すぐに東口へ向かおう。村長は女子供を念のため隠れさせてください」
「頼まれよう」
 北郷は急いで東口へ向かった。張遼という切り札がない今、村の中に入られては全てが終わりだから。
「……念のため、西口も見てきてくれ。訓練どおり配置になっているけど、油断が一番の敵だ。おかしなことがあればすぐに報告に来てくれ」
「分かりました!!」
 一緒にいた村人にお願いをいた北郷は不安を胸に東口へと向かった。


「大丈夫か!?」
 入り口が無事なのを確かめて、防備についている村人に駆け寄る北郷。
「北郷様、なんとか凌いでますと言いたいのですが……」
「違うのか?」
「……はい、あいつら最初こそ、矢を撃ってきたりしてたんですけど、少し前から距離を取って何もしてこないんです」
 村人の説明に北郷は気付く。この攻撃が陽動だという事に。
「みんな、ここを任せた。相手の数からして調練どおり矢を撃てば、絶対に負けることはないから頑張ってくれ!! 俺は西口へ向かう!!」
 言葉を言い終わる前に北郷は西口へと走り出した。
(ふざけんなっ!! ここは絶対に守る!! 張遼が帰ってくるまでは俺がこの村を守るんだ!!)
 北郷は懸命に走った。
 馬の嘶きと怒号が後ろからではなく、前から聞こえてきたことで額に嫌な汗が流れ出た。
(間に合ってくれ!!)
「北郷様!!」
 走っている北郷に並走して声をかけてきたのは先程、様子見にやった村人だった。
「黄巾党が来たんだな? お前は村長に伝えてくれ!! それと東口の警備は絶対に減らすなよ!!」
「え、えっと……は、はい!!」
 村人は何か言いたそうだったが、北郷の剣幕に押されてそのまま村長宅へと走っていった。

「撃て!! 村に近寄らせるな!!」
「数が多すぎます!!」
「馬鹿野郎!! 張遼様の調練に比べればどうってことはない!! ふんばれ!!」
「そうだ、俺達の村は俺達で守るんだ!!」
「くっそー!!」

 西口では既に乱戦状態になっていた。
 北郷が読んだとおり、東口での陽動を少数で行い、西口に兵力を持ってくるという基本戦術をやっていたのだ。
 村人も応戦しているが、如何せん数が違いすぎた。

(くっ……拙い……ここを突破されたら……)
 北郷は何か策はないかと考えたが思いつかない。
「皆!! 頑張れ!! 踏ん張れ!!」
 北郷は自らも剣を取って乱戦に飛び込んだ。
「北郷様!!」
「おぉー、北郷様がきてくれたぞ!!」
 村人の表情に気迫が少し戻る。風前の灯だが、気力が持てばまだ望みがあった。
「うぉぉーー!!」
 雄叫びを上げて北郷が敵を倒してゆく。そう、倒していくのだ殺さずに。
 圧倒的剣技でもってではなく、なんとかトドメをささないといった感じ。手足を切り、武器を叩き落し戦闘不能へとおいやる戦い。戦場では似つかわしくない戦い方だった。しかし、農民崩れの黄巾党員には十分通用したのだ。
 それを見ていたのが、敵兵の大将格と闇夜に浮かぶ白い影だった。

「……舐めた真似をしてくれるじゃねーか……しかし、アイツがここの親分だな」
「……面白いことをする《相変わらず無茶をなさる》」

 両者は正反対のことを呟くと大将格は舌なめずりをして口元を歪めた笑みを浮かべると大声で名乗りを上げた。闇夜に浮かぶ白い影は誰にも気付かれぬように村の中へと消えていった。
「お前ら!! 戦闘やめろ!!」
 大将格の声に黄巾党の攻撃が止み、兵が一旦引いていく。村人達は安堵の表情を浮かべて気が抜けたようになっていた。
(拙い……完全に緊張の糸を切られた……)
「おい、そこの白いの!! お前がここの親分だろう?」
 わざとらしく緊張感の無い声で話しかけてくる敵に、北郷は舌打ちをした。
(思った以上に賢い……)
「そうだけど、降伏するのか? 今だったら、許してやるこのまま帰れ!!」
「おいおい、つめてーこというなよ。オレはここの村の食料全部頂に来たんだぜ? 手ぶらで帰れるかよ」
 敵の声に村人に再度緊張が走るが、戦う気力よりも恐怖の方が大きくなっているようだった。
「絶対にそんな事はさせないぞ!」
「そうだろうなー。さっきの戦いぶりを見ればわかるぜ。そこでだ、お互いの利益を考えて思うんだが、ここは俺とお前の一騎討ちで決着をつけようじゃないか?」
「……」
 北郷は答えられない。
「そうだろ? オレも大事な兵を失いたくない、お前は村を守りたい。お前が勝てばオレたちは帰るさ。オレが勝てば村人は皆殺し食料全部俺の物。分かりやすくていいだろう?」
 敵陣営からは「大将も人が悪い」「このままブッコロしちまいましょうぜ」などと声が聞こえてくる。
 一方で村人は緊張の糸が切れてしまい北郷に縋るような目つきで何も言わない。
(……拾ってもらった恩を返さないといけないよな……受けても断わっても状況は変わらないなら、犠牲の一番手は俺だよな)
「分かった!! でも、お前たちが帰る保障はどこにあるんだ?」
「保障か? このオレ、程遠志様が負けたら皆帰るに決まってるだろう? オレを殺せる奴に刃向かえるほど馬鹿は奴はここにはいねー。もっとも、オレが負けると思っている馬鹿もここにはいねーがな。ガハハハハハハ!!」
 やんやの歓声が敵陣営から飛びかう。
「半分ずつ明かりを灯そうか……暗闇では戦いにくいだろう? お前が」
 程遠志は部下に命じて続々と明かりを灯し始める。北郷も村人に命じて明かりを出していく。その中で西口の指揮を取っていた村人に声をかけた。
「オレが負けたら、すぐに入り口を閉じてもう一度戦うんだ。おそらく村長が張遼に助けを求めている筈、この敵の余裕をついて仕切り直しが出来た今、生き残るにはそれしかない……頼む」
「……北郷様」
「村に拾ってもらった恩をこれで返せるとは思わないけど、利息分ぐらいは返せるだろ? 後は頼んだ」
 北郷はそういうと1人で村の外の決戦場へと歩を進めた。
「おいおい、応援は誰一人出てこないのか? つめてーな」
「五月蝿い。俺が勝てば本当に引き上げろよ」
「勝てればな。さあ、愉しませて貰おうか、来い」
 程遠志は剣を構えて、北郷の前に立った。相手の名前も聞かずに勝負を始めるあたりに言葉通り半分以上遊びのつもりなのだろう。
 北郷の頭の中にには程遠志のことがあった。
(三国志演義において、関雲長の一太刀で絶命した人間。その実力はどれぐらいなのだろうか……)
 中々距離を詰めようとしない両者だが、事情は全く違った。
 程遠志は距離などいつでも詰めることができると相手を軽んじていた為。北郷は敵の隙を伺いながら千載一遇の機会を見逃さないように慎重に動いていた。
「おいおい、さっさと来いよ」と程遠志が飽きたように剣をおろし、無防備に歩いて北郷との距離を詰め始めた。
 その距離が徐々に縮まり、あと一歩で北郷の間合いにはいるといった位置で程遠志がピタリと止まる。相変わらず、構えてはいないのだが、北郷にとっては遠い遠い一歩だった。
「ここまで近づいてやったのに動かねーのか? お前案山子かよ? なあ、お前らも笑ってやれ」
 程遠志が北郷から目を逸らし、背後を向いた一瞬に北郷は裂帛の気迫を持って斬りかかった。
(勝てる!!)
 そう思ったのも一瞬で、北郷の剣は余所見したままの程遠志の剣に止められていた。狙った太ももの真横でアッサリと。
「!?」
「そうだろうと思ったぜ。甘ちゃんよぉ」
 程遠志が止めた北郷の剣をアッサリと弾くと返す刀で北郷の腕を斬りつけると鮮血があたりに飛び散った。
「がああっ!!」
「おっと、今のはわざと外したんだぜ。あんまり早く決着しちまうと面白くないだろう?」
 剣を弄ぶようにくるくると北郷の前で回す程遠志。腐っても歴史に名を残している人間である。剣の腕は確かなものがあった。
(くっそ……マジかよ……雑魚じゃないのか……関雲長ってどれだけ強いんだよ……)
「ほら、早く落とした剣を拾えよ」
 ここから、程遠志の遊びが始まった。


 圧倒的な実力さで弄ばれて身体中に刀傷が増え続ける北郷だったが、その瞳には力が宿っていた。
 絶望なまでの実力差があり、いつ殺されても不思議ではない状況で震える手足を気力で支え力の限り剣を振るう。
(……諦めないぜ……この身体が動かなくなるまで)
 足掻き続ける姿が敵の嗜虐心を刺激したのか、北郷の望みどおりともいえる状況が続く。

 その様子を村の物見櫓の屋根の上から見つめる人影があった。それは村人ではなく、先ほど村へ侵入した白い影に他ならなかった。
「……ふむ……そこの、少し物を尋ねるがよいか?」
 スルリと屋根から櫓に入り込むとそこに居た村人に尋ねる白い影。
「私が誰かなどどうでもいいではないか。それよりも戦っているのはこの村の猛者なのか?」
 村人は戸惑いながらも問われる事を答えていく。
「成る程、ではあの者は武人ではないと。知者でありながら戦場に立つは必勝の策ありか……」
 その言葉に村人は反応し状況を話した。
「何!? それではあの者は命で時を稼いでいるというのか!? 間に合わないとわかっている本隊の帰還の為の時間を?」
 村人が錯乱気味に言葉を投げつけるが、問いかけた人物にはもう届いて居なかった。

(……面白いと思ったが、只の英雄気取りの愚か者か……違うな)
 白い影は自分の考えに違和感を感じた。
(ならば、何故、敵を殺さない?)
 もう一度、戦う愚か者に視線をやると、幸か不幸か弄ばれる北郷の姿が映った。
 一方的に攻撃を受けながらも折れない心で戦い続けるその姿は、負け戦で殿軍を任された忠臣の奮闘に似ていた。

(……愚か者に貸す武はないが、信念を持つ者ならば……この子龍、我が身を差し出そう)
 白い影は傍観を辞めて戦場に舞い降りた。

「その勝負待ったぁ!」

 程遠志が何事かと北郷の背後に視線を向けると、そこには戦場に似つかわしくない着物姿の女性が立っていた。
 着物と言っても裾はミニスカートのように短く、袖や胸元、裾には動きやすいようにカットが入っている。目鼻立ちもスッキリとどこぞの姫と言っても通る美貌。
 これだけでも相当なものだが、それらを台無しにする逸品を女は手にしていた。槍のようだがわ切っ先が二つに分かれた戟とも薙刀とも言えない不思議な武具だった。

「テメエ、何者だ」
 程遠志が訝しむのも当然だった。今頃になって横槍を入れてくる奴にロクな奴がいないと感じたからだ。
 一方、北郷は剣を杖に立つのがやっとの状態で後ろを振り向く余裕などなかった。ただ、程遠志の隙を見逃すまいと気力だけで立っていた。

「私か? 貴様等のような下郎に名乗る名などない。強いていうならば、北郷殿に助力する者だ」
 これには程遠志は頭にきた。自分に剣の腕があったが故の油断だったのかもしれない。
「死にたくなけりゃ大人しくしてやがれ! あとで可愛いがってやるからよ! 先ずは、いい加減飽きたコイツから血祭りだ!」
 程遠志は相手の力量を見誤った。
 数十歩以上離れた位置からじゃ何も出来ないと踏んで無造作に剣を振り上げた。
 戦いが始まって初めて見せる本当の隙だった。

「だあぁぁぁ!」
 程遠志も女も驚いた。死に体の北郷が程遠志の脇腹に痛烈な一撃を繰り出したのだ。
 程遠志はかわす術なく一撃を貰ったが幸か不幸か北郷には程遠志の鎧を貫く力は残っていなかったが、その渾身の一撃に膝を折ったお陰で女の致命的な斬撃を避けることが出来たのは程遠志に対する神の手の成せる技だったのかもしれない。
 しかし、その運もそれで打ち止めとなった。女に剣を叩き落され、槍を突きつけられて生殺与奪の権利を握られていた。
「く、くっそぉぉ……テメエ、一騎討ちを横槍を入れるとは武人の風上に置けぬ女め!!」
 程遠志は女を非難するが、女は涼しい顔でこう切り替えした。
「一騎討ちとは互いの武、互いの誇りを賭けて雌雄を決することを言うのだ。決して相手を嬲者にすることを言うのではない!」
 程遠志に言葉を叩きつけると同時に石突きで鳩尾を突き黙らせた。



――2日後。

 張遼が知らせを受け自警団を引き連れて戻って来た。
 ことの顛末を聞き、張遼は村長に詫びた。村の危険を排除するための行動が村を存亡の危機に晒したのだと。

「……張遼殿、先ずは客人に会って頂いたい。その後に北郷殿を見舞って下され。話はそれからでも遅くはないぞ」
「……せやな」
 村長に道理を説かれては、張遼も引き下がるしかなかった。


「……趙雲はいつまでここにいるんだ?」
 寝床から顔だけ横に向けて、横の椅子に座っている女性に声を掛けた。
「主も強情ですな~。星と呼んでいいと言ってますでしょう」

 そう、先の襲撃事件で北郷の加勢に入った女性は趙子龍。三国志きっての忠義の将であり、蜀の支柱となる筈の人物だったのだ。

「真名はとても大切なものだろ? それを簡単に許しちゃ駄目だって」
 北郷は知っているからこそ簡単に受け入れる事が出来ないでいた。
「簡単にではありません。この2日、主を見、村人の評判をしり、何よりあの戦いを見ておりました故の結論です」
 趙雲も一歩も譲らない。
「いや、ほら、俺なんかよりもっと頼りになる人に出会えるかもしれないじゃないか? だから、俺の事は保留でさ、誰にも会えなかったらでいいじゃん、ね?」
「……主は私をその様な尻軽女だとお思いか!」
 穏やかな趙雲の表情が一変し、殺気立つ。
「一期一会。出会いは得難いもの……確かに主よりも器量の大きい人物もいるやもしれませぬ。しかし、私がこの時を得難いと考えたのです。それを保留にせよと申されるのか!? 一事が万事、物事を軽んじる私ではありませぬ!」
「ごめん……」
「しかし、このままでは拉致が開かぬのも事実……主よ、私がお側に置けぬ役立たずと申されるならば、諦めもつきます。そう仰ってくだされ」
 趙雲はそう口にし、だんまりを決め込む。全ては北郷の心一つだと言うように。
(趙子龍にこうまで言われて断れるのか? それもむさい男じゃなく、とびきりの美人だぞ……けど、蜀の五虎将がなくなる……歴史が変わる……)

 北郷が悩む理由は歴史が変わったらどうなるのか、その身をもって知っているからこそだった。
 この世界に来て張遼と過ごす日々で色々と思い出したことがあった。以前の記憶のようなもの北郷自身それが自分の記憶かどうかが曖昧ではあったのだが、それでも事実だという確信があった。

(記憶の欠片では、魏で三国統一を成してしまい張遼がその名を轟かせる戦場を歴史から奪ってしまった結果、俺は消えた。赤壁で勝ったり、定軍山で勝ったのも影響していたのだろう)

 北郷は悩む。悩むべきではないとわかっていても悩む。

(……俺は何度この世界をまわった? 一度や二度とではないだろう……ハッキリと思い出せるだけでも数度――これに何の意味がある……趙雲との出会いは本当に偶然なのか?)

「……趙雲さん」
「星です」
「……卑怯な言い方かもしれないけど、俺は張遼の部下なんだ。上司の許可なく部下は持てないし、何より俺には趙雲を抱える器量も甲斐性もないよ……ごめん」
 北郷はやんわりと断った。この世界で生涯を全うするためにも歴史は変えられない。それが北郷なりの結論だった。
 しかし、当の趙雲は笑みを浮かべていた。
「それでは私に不満はないと? ただ、状況が許さないだけなのですな? その張遼殿に話を通せばよいと?」
「ま、まあ、そうかな……(張遼に話がいったところでOKするわけないしな)」
「早速、張遼殿と話をつけてまいりましょう」
 趙雲が立ち上がり扉を開ける前に村長と張遼が中に入って来た。
「おや? 趙雲殿こちらにおいででしたか? 朝一番で散歩に出られたと聞いていたのですが……」
「散歩のついでに寄っただけですよ」
(……朝一番から来てたのはそういう理由か……)
「で、何か御用でも?」
「いやいや、張遼殿が戻られたので改めて此度のお礼と思いましてなあ、ホッホッホ」
 村長の言葉で趙雲はようやく横にいた張遼に目を向けた。
「もしかして、貴殿が張遼殿か?」
 趙雲は張遼に向けてストレートに聞いた。
「せや。ウチがおらん時に世話になったみたいやな……礼を言うわ。感謝の言葉しかないわ」
 張遼は深々と頭を下げ感謝の意を表す。
(……これまた珍しい……)
「頭を上げて下され張遼殿。貴殿がいらっしゃれば苦もなく切り抜けられた些事。頭を下げるような事ではありますまい」
「そんな事は関係あらへん。村を、部下を助けてくれた事実は変わらん。尽くされた誠意には誠意をもって応えるしかないんやけど、この身一つでは感謝しか出来ん」
「この身一つ?」
 趙雲は信じられないという表情を浮かべ、その疑問に村長が答えた。
 張遼が村の警護を無償で行っていること。黄巾党討伐の賞金すら村に渡してくれていることを。

(……訳ありということか……償いか償いという名の自己陶酔か……それに主が頑なに私を拒む訳の半分も理解出来た……)

「張遼殿のお気持ちは十分に分かりました。では無粋で不躾な事をお聞きしたいので、それで此度の一件の貸し借りを無しにしませぬか?」
「……構へんで。何でも聞いてええよ」
「安請け合いしない方が良いのでは?」
「ウチに二言はない」
「では、お言葉に甘えて……」
 趙雲は意味ありげに北郷を一瞥するとすぐに張遼に向き合うと切り出した。
「張遼殿は、主――いや北郷殿をどう想っておられる? おっと、部下というのはなしですぞ」
「ぶ――」
 張遼は答えを封じられて窮してしまう。
「悩むようなことでもありますまい。要は好いているか否かです」
 趙雲の直球過ぎる態度に北郷は我慢出来ずに割って入った。
「星! そんな事聞いても意味ないだろ!」
(星?……もしかして、真名なんか?)
「ようやく呼んで下さいましたね」
 ニヤリと笑う趙雲をみる限り確信犯のようだった。北郷はしまったという顔になり、さり気なく張遼に視線をやると何か考え込んでいるように見えた。
「意味はあります。張遼殿が主に何の想いも抱いていないなら、私は頭を下げましょう。しかし、主に少なからず好意をもっているならば、正々堂々と張遼殿に勝負を挑まねばなりませぬ故、頭は下げられませぬ。この子龍、戦わずして兜を脱ぐ気はありませぬので」
 これまた、ど真ん中の直球を投げた趙雲は北郷と張遼の言葉を待った。
「それこそ意味ないって! 張遼を困らせるなよ! 俺だって怒る時だってあるんだぞ!」
「主はこう言ってるが張遼殿は如何か?」
「ウチは吐いた言葉は飲み込まへん。せやけど、答えたくても答えられへん事や答える権利のない人間もおる。一刀の事は自分でもようわからん……嫌いではないが、かと言って好きかと言われればわからへん……それにウチにはそんな権利がないんや」
 張遼は正直に答える。
 村長は苦々しい表情を浮かべるも口を挟まずに静観する。
「権利? 張遼殿は勘違いされてますなあ。それに親切の押し売りは贖罪にはなりませぬぞ」
「なっ!?」
「おや? 反応するという事は少なからず自覚があるのですか?」
「趙雲、やめろ! 何も知らない癖に!!」
 張遼が顔色を失い、北郷が頭に血を上らせる中で、村長と趙雲の二人は冷静だった。
「では、主はご存知で?」
「!?」
 趙雲の言葉に張遼も息をのむ。
「村長に聞いた……少なくとも趙雲よりは知ってる……張遼の辛さもその行動も理解出来る」
「なら、お聞かせ願いたい。欲しい物は己が手で掴み取るもの。贖罪は全てを背負い己が信念を曲げない茨の道……違いますか?」
「……くっ……」
 趙雲の言葉に北郷は押し切られそうになるが、北郷とて失った事の恐怖を知っている。その無力感も身にしみている。
「確かに私は事情を知りませぬが、張遼殿が間違っているのはわかります。正しければ、そこの村長が辛そうな表情を浮かべる筈がありませぬからな」
「だからって、今ここで言う事ではないだろう!」
 北郷の精一杯の抵抗。
「今だからこそでしょう。今ならば張遼殿は私の誠意に応えるべく考えもしましょう。しかし、この機を逃せば全てが一人よがりのままになる。本来、私には関係ない話ですが今回は主の事が絡む故、話しているだけです」
「……」
「……」
 張遼と北郷は何かを考えている。
「……趙雲殿の言う通りです。張遼殿、孫の事はもう気にせんで下され、過ぎたこと。自由奔放で真っ直ぐな張遼殿に戻って下さる事が孫の供養になります……もう十分です。我々は我々の生きる道を張遼殿は張遼殿の道を行くことこそが天意なのではと思います」
 恭しく村長は頭を下げた。普段の飄々とした空気はなく真摯な言葉と態度であった。

「……腕っぷしだけの正義を振りかざしてたウチに戻れ言うんか? 静かに騒ぎを収める術を知らずに……小さな命を巻き込んで散らしてもうた愚か者に戻れ言うんか?」
 張遼は苦しみながらも何とか言葉を紡ぐ。
「そうです。弱い我らを救って下さったあの頃に。そして、まだ見ぬ我らのように弱い者を救って下さい。今なら北郷殿も傍にいらっしゃる、趙雲殿も合力下さるやもしれません。張遼殿の気持ちは我らには過分すぎます」
「……」
「……張遼、俺で良ければ力になる……いや、力になりたい!!」
「……」
「さて、盛り上がっている所申し訳ありませぬが、張遼殿答えは頂きたい」
「趙雲! そんなのあとでいいだろう」
「よくありませぬ。私にとっては大切な事」
「……趙雲のいうとおりや、先ずはそっちや」
「で、張遼殿いかがか?」
「惚れた腫れたの細かいことは正直ウチにはまだわからん。でも、一刀はウチのもんやで」
「なっ!?」
「これは大きくでましたな」
 張遼の宣言に北郷と趙雲は驚きを隠せなかった。
「一刀はウチの許可なく真名を呼んだ……事情があって命を預かっているんや」
(なんだ、そういう意味か……ビックリした)
「……主、馬鹿だとは思ってましたがそこまでとは……そういう理由ならば、私が一時的に下がるしかないですな……全く、馬鹿にもほどがありますぞ、主」
「ご、ごめん……」
「趙雲すまんな、せやけど邪魔するつもりはないで。主従関係は好きにしたらええ」
「えーーーー!?」
「ほぉ、張遼殿は器量が大きい。では、主、これからもお願いします」
「で、でもでも……」
「一刀、武人が惚れた相手に仕えたいとここまで言ってるんや、しかも真名も預けてもらったんやろ? ここで逃げるようやと男やあらへんで」
「……わ、わかったよ……趙雲、よろしく頼むよ」
「……」
 北郷の呼びかけにあからさまに無視を決め込む趙雲。
 その様子を見て笑いを堪える張遼と村長。
 北郷は、ガシガシと頭を掻くとよそ見している趙雲にもう一度声をかけた。
「せ、星、これから張遼と俺の力になって下さい。お願いします」
 北郷は勢いよく頭を下げた。
「分かりました。少し、気になる部分はありますが、今は真名を呼んで頂いたことで良しとしましょう」
 趙雲は北郷に振り向きそう告げると、改めて、片膝をつき拳と掌を目の前で合わせて北郷に拝礼の形を取った。
「北郷一刀殿、この趙子龍、我が真名【星】の名に懸けて今より未来永劫、忠を尽くし、義を貫き、盾となり御身を守り、矛となり御身の道を切り開きましょう」



《世界が変わり、この魂が朽ち果てるようとも……》



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tag : 真恋姫無双

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まったりとプレイ中・・・ではない
Web 恋姫†無想 張遼を育成中!
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上原 柊

Author:上原 柊
画像は、玉倉かほ様の了承を得て貼らせて頂いております。

胡蝶の夢

誰も読んでないと思うけど、恋姫話は現在↑のところで書いてます。無謀もいいとこですが、、まあいけるとこまで行くぜって感じで。

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なんとなくやってみた。頑張った。
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