スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

欠けた世界の行く末 -3-

おはようございます。

未曾有の大地震が起きてしまいました。

関東以北の方々は大変ですが、気をしっかりともって頑張って下さい。
月並みの言葉しかかけられないですが、ご家族、ご友人の方々の無事が確認されることを切に願います。

このブログを始めて知り合った方々でも、今回の被災地やその近辺にお住まいの方がいらっしゃいます。
連絡がついた方もいらっしゃいますが、音信不通の方もいらっしゃいます。

連絡手段がないだけで、無事であることを祈っています。
【便りのないのは良い便り】であることを信じています。


そして、更新。
気晴らしにでもなればと思い、通常営業です。


卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回
回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍



 周囲に目を配る事が出来るという事は、心身ともに余裕が出来たということ。しかし、余裕が出来るという事は良いことばかりではない。今までは雑音として流れていたものがクリアに聞こえてくるという事。
ハッキリと言えば、北郷の状況は針のむしろに座っている事と同じ。村長と張遼の口添えがあったが、村民にしてみれば余所者でしかなかった。
 それはいつの時代でも同じ。自分達と違う存在は語らずとも肌で感じ取れるし、それは理屈ではなくある種の恐怖と言っても過言ではないのだ。その恐怖を紛らわせるには関わらぬことか攻撃的になるしかなく、北郷が大人しいことが村人を攻撃的にしていた。

 そんな中、転機が訪れた。

「村長!」
 一人の村民が血相を変えて駆け込んで来た。
「先ずは落ち着くのだ。一体、どうしたのだ?」
 村長は村民を落ち着かせて、その内容を聞いた。
「は、はい……それが高青(こうじょう)さんの娘が流行病にかかっちまったんです!」
「何だと!? それで対処したのか? 高青は?」
 いつも飄々として掴みどころのない村長が顔色を変える。
「それが……高青さんが取り乱しちまって……なんとか取り押さえて縛ってますが、嫁が娘を渡さないと家から出てこないんです」
「馬鹿者! あの病の怖さを忘れたのか!?」
「わ、わかってますよ。けど、高青さんは張遼様と一緒に村を守ってきてくれた人だし……」
 村人は判断をしかねると言葉を濁した。
「……やむを得ない場合は母子二人とも……」
 村長は村人の困惑を理解しながらも決断を下すしかないのだが、村長自身も迷いがあるようだった。
「……村の為ですか?」
「そうだ。だが、最後に張遼殿に説得してもらおう。高青も分かってくれるはずだ。高青を説得出来れば嫁だけでも何とかなるだろう」
 村長は苦渋の決断をしなくてはならない事を想定しながらも一縷の望みに託す事にした。


 村長は張遼宅を訪れ、事情を説明し助力を願った。
「張遼殿……お願いできませんか?」
「……構わんけど……高青のおっちゃんは子煩悩やからな。約束は出来んで。そん時は覚悟してもらわなアカンけど、ええんか?」
 村長の依頼に張遼は頷くも張遼自身が最悪の事態を覚悟しているようでもあった。

 そんな重苦しい雰囲気の中、一番大事な事に触れていない事を疑問に思った北郷が割って入った。
「ちょっと、病気ぐらいで殺気だっているけど、医者に診せれば解決じゃないの?」

「一刀……」
「北郷殿……」
「……ちっ! これだから余所者は……」

 北郷の発言に場の空気が凍る。

「……一刀、ちと、こっち来ぃ」張遼が北郷を引っ張って席を外した。
 そして、外まで出ると張遼が北郷に向き直ると両肩を掴み静かに話し始めた。
「一刀の素直な所は好きやけど、さっきのは酷すぎるで。流行病にかかったら十中八九死ぬ……死ぬまでに他の人間にうつすんや。みんなを守るにはどうすればええか、分かるやろ?」
 張遼は小さい子供に言い聞かせるような話したが、北郷は張遼の言葉の意味するところが“諦め”と“尊い犠牲”であることに納得がいかず、ムキになって反論する。
「ちょっと! そんなの無茶苦茶だろ! だから医者に診せれば治るだろ! 田舎だから薬が足りないとか、そんなのが理由なんだろう?」と噛みついた。
「……一刀……アンタ医者医者言うけどな、その医者がさじをなげてんねんで。ウチらが何もせえへんみたいに言うけどな、数年前にやれることはやったけどアカンかった……それどころか被害が大きくなったんや」
 張遼の表情からするにかなり酷い状況になったのだと推測できたが、それでも北郷は納得する訳にはいかない。張遼が簡単に諦めるようなことを口にすることが我慢できないのだ。
「……だけど!!」
「一刀、アンタ身近な人間の死に出会うたことがあるか? 苦しみながら死んで行くのに何も出来んでいる自分になったことがあるか? ウチはもうあんな思いはしたない。1人の犠牲で何十人と助かるんやったらウチは鬼にでもなる……」
「……」
 張遼の言葉には重みがあり、北郷の言葉は何も知らない人間の理屈だった。
「今回は初めてやったから仕方ない。ウチの監督責任ちゅうことにしとくから、もう黙っときや」
 張遼はそう言うと村長の待つ部屋へ戻ろうとした。
「待ってくれ!!」
「何や?」
「その流行病はどんな症状なんだ?」
「……。せやな、高熱が延々と続く事が共通の症状で、それ以外は下痢が続いて食えんようになって衰弱死する奴、意識が無くなってしまう奴、肺をやられ血を吐く奴、最期はバラバラやけど助かった奴はほとんどおらへん」
「……ほとんどって事は助かった人がいるんだよね?」
「ウチは見たことないけど、荊州で何人か助かったって聞いたことある程度や、ホンマかどうかも分からん。……一刀何考えてんねん?」
「張遼、お願いがあるんだ」
 北郷が土下座をして張遼にすがると、性格上、北郷の話を聞かざるを得ない張遼だった。

 その北郷が張遼に耳打ちすると、張遼は激怒し北郷の胸倉を掴むとその真意を問いただした。

「一刀、ウチの話を聞いてたんか? それで自分の言うてる事が、どういうことか分かってんのか!?」
「ああ、張遼が言ったように死に直面した事はないけど、だからって諦めるのは絶対に嫌だ。俺はまだ何も挑んでいない。だから、俺は俺なりのやり方で挑むよ。それで駄目なら好きにすればいい」
 北郷は諦め切れない。病気の子供がではない。
 張遼が諦めている事がどうしても納得できないのだが、それは北郷のエゴだろう。人の死は避けられないものだし、北郷の居た近代的治療が望める世界でもないのだ。
 それでも尚、自身のエゴを諦めきれないの北郷は前に進むことにしたのだ。命を懸けて。
「……わかった。好きにしたらええ、責任はウチがとる」
 そんな張遼に北郷は意地を張ってみせる。
「張遼に迷惑はかけないよ。余所者が村の掟に逆らって死ぬだけのことだからね」
 北郷は震える足を手で押さえつけて気丈に振舞う。
「アホぬかせ!! 新参者が何て言うて皆を納得させんねん!! それに一刀はウチが拾たんや。ウチ以外に誰がケツ持つねん?」
「……それはそうだけど……捨て猫拾ったみたいに言われると流石に凹む……」
「凹む? ウチ殴ってないで? 殴って欲しいん?」
「や、やめて! 張遼に殴られたら楽に死ねる! 凹むっていうのは、えっと、えっと……憂鬱って事だから!」
「せやったら、最初からそう言いや。まあ、無事に済んだら思いっきり殴ったるから絶対に死んだらアカンで。男が意地張るときは死ぬ時やないで、絶対に生き残る時に張るもんや!……それに勝手に死なれたら寝覚めが悪いわ」
 張遼は無茶苦茶だと感じながらも北郷に感じるものがあったのか、はっぱをかけて送り出した。


「村長、一週間時間を下さい。治せるとはいいませんけど、やれるだけのことはやってみたいんです!! 皆も本当は納得してないんでしょう? 俺は諦めたくないんです!!」
 北郷は張遼の後押しを得て、まずは村長をはじめ村民の説得に挑む。

「最初に言っておきますけど、俺は医者じゃないから絶対とは言えないけど、不治の病なんてものは存在しない。ただ、治し方を俺たちが知らないだけなんです。だから、騒がないで欲しいんです」
 北郷は理解してもらおうと懸命に言葉を尽くす。病は気からというのは迷信ではなく、周囲の環境が病人の治そう、治るという気力を奪ってしまう事で病状が悪化するのだと。
 誰も北郷を信じてはいないが、北郷が口にした『皆も本当は納得していないいでしょう?』という言葉が村民の心に突き刺さっていた。
「それと俺が付きっきりで看病するから、両親は回復した子供を任せるから無理にでも引き離して静養させておいて欲しい」
 北郷は頭を下げる。
「それはウチに任しとき。なんとかしたる。村長も協力してや? 上手くいったら儲けもんやし、新参者が死んでも誰も文句言わんやろ? どうせこのままやったら、高青の子供は……一か八かでもやる価値はある。ちゃうか?」
「……張遼様がそこまで言われるのでしたら……もう一度、もう一度だけ村全体で協力してみよう。好きで村人を殺しているのではないのですからな」
 村長は少し考えた後そう答えた。

 それから北郷は病人と寝食を共にすることになった。

(嘘も方便か……それでも、治せないからって殺す選択肢はありえない。癌とかどうしようもないものでない限り、病気なんて気力体力があれば治るはずなんだ!!)
 北郷は自分に言い聞かせるように心の中で呟くとすぐ様行動に移った。

 病人を村から隔離して村の外に小屋を建てた。周囲の雑音を防ぐ為である。病人は聞こえて内容でも周囲の事を理解しているはずだと北郷は思ったからだった。
 医者でもない北郷に出来る事は、ここから忍耐力勝負。清潔感を保ち続ける事と薬草での投薬もどき。

「爺ちゃんが昔話で言ってたのを思い出せ一刀……」
 自分を叱咤しながら記憶を探る。
「確か……解熱効果があるって言ってたのがナズナだっけ? ミミズも煎じてとか言ってたけどそんな余裕ないしな……下痢止めが桜皮? 咳止めはオオバコだっけか? くっそー……後はなんだっけ……」
 幾つか思い出したもののうろ覚えの域をでない。それでも思い出せたことは無駄ではない。
 少しでも何かの足しになれば助けられる可能性が0.1%でもあがるのだ。
「順、頑張れよ。親父さんもお母さんも君の回復を祈っている」
 張遼のこともあったが、北郷には自分でも意識していない理由があった。高青の娘である順は、北郷が村に解けこもうとしている時に唯一北郷を色目で見ていなかった子だった。
 父親である高青が張遼の元によく出入りしていたので、よく見かける程度の認識でしかなかったからだ。
「う、う、う……ん……」
 床に伏し唸っている順の横に座るとそっと手を握ってやる北郷。
 その小さな手は熱を帯びていて溶け出しそうなほどに感じた。額にもう片方の手をやり汗を拭ってやる。
「頑張れ。頑張れ」
 小さい頃、自分が風邪で倒れた時に不安で仕方がなかったことを思いだし、手を握り締めてやりながら励ます。
「負けるな……絶対に助かるんだ。病になんか負けるなよ」
 汗は噴出すように拭いても拭いてもでてくる。その度に拭ってやり、布の切れ端を水につけ額に乗せる。
 
 本当にただ横についていてやる北郷。
 大見得を切ったものの出来る事はたかが知れているが、これが北郷なりの意地の通し方である。
 
 そんな不眠不休の日々が3日も続けば、病人も体力的に厳しくなるが北郷の体力も限界に近づいてくる。人間は寝ないで行動出来る時間は多くはないからだ。

「……少し熱は下がり始めたか……くっ……これからって時に……」
 足元がふらつきながらも桶を抱えて水場に向かう北郷。
「そろそろ、なにか……無理にでも……食べさせない……と……な」
 額に手をやり日差しを避けながら歩く北郷だが、眩しさで手を当てているのではないのは明白。顔をしかめている様子から頭痛なのだろう。
 川辺に辿りついたのは不思議なほどの足取りで洗濯をする北郷だったが、煌く川面に目が眩み仰向けに大の字に倒れると動かなくなった。
(……空が……黄色……いな……そ、ろそ……ろ戻ら……な、い……と……)
 北郷の意識は途中で途切れた。

 その様子を遠くから見つめていた影が一つ。
「……アレがそうか……全く無茶をする。患者が1人と聞いていたが2人になりそうだな」
 影はそう呟くと北郷の元へと近寄って行き、その体を担ぎ上げると北郷の居た小屋に向かって歩き出した。
 とても人一人を担いでいるとは思えない速度で歩いていく。赤の短髪は特徴的で、その腰にはポーチのようなものを身につけていた。

「!! しまった!! 戻らないと!!」
 北郷が飛び起きるとそこは順が寝ている小屋だった。
「え!?」
 状況が把握出来ないけれど、順の容態を確かめるべく近づくとその寝息は規則正しいものになっていた。 
「今朝よりよくなっている?」
「今朝じゃないぞ。一昨日の朝だ」
 北郷の背後からそんな言葉が投げかけられる。
「誰だ!!」
 北郷は勢いよく振り向くと順を庇うように背に隠す。
「随分な言葉だな。まあ、それだけ話せるのなら大丈夫だろう。そこの女の子も治療しておいた。病魔は倒したが回復するには十分の休養と栄養が必要だ。気をつけることだな」
 赤い髪の男はすっと立ち上がると小屋から出て行こうとする。それを北郷は引き止めた。
「ちょっと待ってくれ!!」
「なんだ? 病魔が居ない上に看病する人間も回復したのだから問題はない」
「貴方が治療してくれたのか?」
「そうだ。君のほうは寝かしておいただけだが」
「村長が手配してくれた医者なのか? ありがとう! 本当にありがとう! なんとお礼を言ったらいいのか……」
 北郷はようやく現状を把握すると目の前の男に頭を下げた。自分ではどうなっていたかも分からない上に、無責任にも倒れていたところまで救ってくれた事に心から感謝した。
「見た目は不可思議な格好をしているが、存外に律儀な男なのだな君は」
「律儀もなにも命の恩人に感謝するのは当然だ。それと、どうやって治したんだ? 村長も知っていれば最初から言ってくれればいいのに」
「質問が多いな。君の疑問を解決しないと帰してもらえそうにないからさっさと済まそう」
 赤い髪の男はそういうとどっかと座り直した。
「まずはゴッドヴェイドーには守秘義務がある。依頼人のことは話せない。ただ此処の村長に請われたわけではない。それに普通の医者ではこの病は治せない。飛び切り強力な病魔だからな」
「五斗米道? 村長じゃない?」
「ゴッドヴェイドーだ!!」
「す、すいません……」
「分かればいい。そうだ、村長は知らない。そんな些細な事よりも、その娘が治ったことを喜ぶといいだろう?……それと不思議なことがある」
 赤い髪の男は逆に北郷に聞き返した。
「この病は人から人へと伝染する。その脅威は蝗の如きだ。だが、今回はその兆候が全くなかった上に、傍にいた君が全くの健康体だった。こんなことは初めてだが、君は一体何者だ?」
「そんなことを言われても分からないよ。俺はこの子を助けたい一心で看病を名乗り出たに過ぎないんだ」
「……そうか……まあ、人には言えない秘密があるものだ。深くは追求しないさ」
「……」
「もういいだろう。帰らせてもらうけども治療費の事だが、いいか?」
「そ、そうだ! いくら払えばいいんだ? 村に行けばいくらか出せると思う」
 北郷は慌てて聞き返す。
「そのことだが、お金はいらない。君が1人で治した事にすればいい。ただ、治療法は分からない奇跡が起きたとでもしておいてくれ。次に掛かった人間には残念な事だが、君では治せないからね」
「どうして!?」
「それが依頼主の要望なのさ。君は命の恩人の要望が聞けないとでも?」
「そ、そんな事はないけど……。わかった言う通りにする」
「それが懸命だよ。じゃあ、これで引き上げることにするよ、次の患者が待っているものでね。君の運は特筆するものがあるようだね」
「え?」
「何故かこの当たりに邪気を感じて歩いていた時に依頼主に会ってね、今回の事を依頼されたのさ。本来なら今頃は江東に滞在している予定だったのからね、天にでも愛されているんじゃないのかい」
「……」
「ま、戯言だ。気にしないでくれ。縁があれば君とはまた会えるような気がする。それじゃ」
 赤い髪の男は名も告げずに出て行った。
 北郷は奇妙な出来事を喜んでいいものかどうか判断しかねた。ただ、順が助かったことだけが北郷の心を潤わせた。

 外は銀月が怪しく光り輝いていた。
 銀光が弱弱しく、その光が僅かに赤みを帯びていた。
 後に、赤銀月と呼ばれる事となるその月は、事あるごとに姿を見せることになるのだが、その存在に気付くものはごく一部であった。

 小屋から十分に離れた小高い丘に一つの影があった。
「治療以外に三文芝居までやらされるとは思ってなかったが、これでよかったのか?」
 赤い髪の男は影に向かって語りかけた。
「十分だ。感謝する」
 影は無愛想に答える。
「しかし、君の病を治せないのが不甲斐ない……」
「華陀殿、そう自分を責められますな。この体、いや、この魂は天(地獄の鬼かもしれぬが)の御心なのでしょうな」
「一つの体に二つの魂……歪すぎる……」
「二つは言いすぎでしょう。私は私なのだし、出てこられるのもホンのひと時。せいぜい一つと二分程度でしょうな、はっはっはっは」
 影は自分のことなど瑣末に過ぎないとでも言うように笑い飛ばす。
「それほどまでに、あの少年が大事なのかい?」
 華陀と呼ばれた男は、聞くまでもない答えを聞いていた。
「全て。我が身を砕こうともお守りする」
「そうか……聞いた事が愚かだったかな。本来ならこんな事はするべきではないのだろうけれど、これを渡しておく」
 赤い髪の男は砂状の何かが入った小瓶を影に渡した。
「これは?」
「龍の逆鱗から作った劇薬。死の淵にいる人間を、少しの間この世に留め置くことが出来るものさ。使わないことを祈るが、裏の君がどうしても表に出ていたい時に使うといい」
「ふむ……して、その代償は?」
「君の消滅だと思うが、正直どうなるか分からない。君のような人間は初めて見るし、使わないにこしたことはないのだから」
「何故頂けるのかは聞かないでおきましょう。華陀殿のご厚意感謝する」
「……また会えることを信じている」
 影と華陀は固い握手を交わすとそんまま分かれて別々の方向へと消えていった。


――翌朝

「北郷様! ありがとうございます!! ありがとうございます!!」
 高青は涙を流しながら感謝の言葉を何度となく繰り返した。
「高青さん、助かったのは俺の力じゃないよ。娘さんが助かりたいと諦めなかったこと。村の皆の協力があって、そこにほんの少しの幸運があったから」
 北郷は謙遜ではなく本当にそう思い素直に答えた。
「違います! 北郷様が皆を説得して下さって生きる機会を作ってくれた事に感謝しているんです! 仮に娘が助かっていなくても同じ感謝をしていました」
「……こちらこそ、ありがとう」
 北郷は他に返す言葉が見つからずに照れ隠しでそう答えるのが精一杯だった。

「一刀」
 張遼が村人達の歓喜の輪に加わらずに北郷の傍にやって来た。
「張――がはっ!!」
 張遼どうしたの?と言う前に盛大に殴り倒された。
「痛いか? それが生きてる証拠、ありがたみや。今回はウチも色々考えて無茶させたけどな、一つだけ一刀の間違いを言うといたるわ!」
「間違い?」
「自分身寄りがおらんから、最悪の場合でも誰も悲しまんと言うとったやろ? この村に1日居たら1日の繋がりが出来て、2日いたら2日分。一刀はウチらの仲間やろ! 次からは絶対にこんな無茶は許さんからな!」
「張遼……」
 本気で心配してくれていた事は殴られたら痛みから感じ取れた。
「それとな、今後の為に言わんでええ事もオマケで教えてといたる。武人が責任を取るいう事は同じ対価のモノを差し出すいうことや。腕なら腕を、足なら足を。命には当然命をや……人の命に貴賤はない全てが同じや、覚えとき」
 張遼は無愛想に言い放つと、今度は村長の元へと向かった。
 取り残された北郷は張遼の言葉を噛みしめる。
(……ただ、俺はすべてを諦める姿の張遼を見ていたくなかったんだ……病人を助けたいのも本心なら、この想いも間違いなく本心なんだ……)

 この出来事から北郷は村に溶け込むことが出来たと同時に尊敬を集めるようになる。
 そして、この後三日間床に伏してしまう北郷に熱の影響からか、奇妙な記憶が虫食いの形で蘇るのだった。


 血飛沫が舞い血だまりが広がっている

 その中心に立つ張遼の体から生えている大剣
 
 それでも尚、崩れ落ちない張遼
 
 張遼の体から引き抜かれる大剣
 
 それは無常にも身動きの取れない張遼に振り下ろされた


 目の前が真っ赤になって目が覚める北郷が、夢であることに安堵したが、その臨場感からとても只の夢とは思えなかった。
「張遼が死ぬ? 馬鹿げている……そんな事はありえない……」
 北郷は自分に言い聞かせるように呟くと頭から布団を被った。
 北郷は懸命に目を瞑って忘れようとするが、それが返って血まみれの張遼を見下ろす人物の顔を脳裏に焼き付けることとなる。
(張遼を斬ったのが夏侯惇だなんて……そんな馬鹿なことはありえない……魏の仲間同士なんだぞ……ありえないんだ……)



卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回
回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍回卍

tag : 真恋姫無双

コメントの投稿

非公開コメント

まったりとプレイ中・・・ではない
Web 恋姫†無想 張遼を育成中!
興行日程
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィールなのか?

上原 柊

Author:上原 柊
画像は、玉倉かほ様の了承を得て貼らせて頂いております。

胡蝶の夢

誰も読んでないと思うけど、恋姫話は現在↑のところで書いてます。無謀もいいとこですが、、まあいけるとこまで行くぜって感じで。

FC2カウンター
なにかあれば、コチラ
拍手する
検定
なんとなくやってみた。頑張った。
最新記事
最新コメント
リンク
なにわんGP楽しかったですねー
なにわんGP応援中!
ζ'ヮ')ζ<よみますよぉー
『4ページマンガ最前線』 | 最前線
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。