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『エンジェルカップ』13日目 第三試合


――試合前

「美加、私絶対に負けないよ」
「QTだって!! 悠里にだけいい格好させないもん」
 楠木が金井を誘って外に出ていた。
 別館の裏口は大通りから外れていて、この時間帯では人もまばらだった。
 リーグ戦の最終戦が同門対決になっていて、金井は決勝進出の目はないが、楠木はこの勝敗次第で決勝進出もありえるのだ。
 ファンの大方の見方としては、金井が楠木のアシストをしてすんなりの決着と予想していたし、団体の威信が掛かっているとなれば問題ないことだとも思えた。
 だが、本人達はそれでは納得いかない。
 だから、楠木が金井に宣戦布告し、金井も大会での成長をみせるようにその宣言を真っ向から受け止めたのだ。
「悠里、ぜ、全力だよ。QT怖いけど、QTだって成長してるんだから。悠里に勝つなんて、ど、どうってことないんだから!!」
 本当に怖いのだろう。でも、勇気を振り絞って同期であり、親友であり、ライバルである楠木に手抜きは無用という金井。
「勿論だよ。私もこの大会で色々と学んだよ。それに私はプロレスが大好きなんだ……それをもう裏切ることは出来ないよ」
 楠木も金井の心を受け止めて断言をする。
「悠里、最高の試合しようね」
「最高の試合をしよう」
 金井が右手を差し出すと楠木が握り返す。
 そして、どちらかとも無く手を離すと二人は勝負師の顔になり、それぞれの控え室に帰っていった。

その様子を影から見守っていた人物が溜息を吐く。
「ふぅぅ……本当に成長しているな……」
「やっぱり寂しいかい? 上原さん」
「会長!?」
 まさか見守っていた自分が後ろから声をかけられると思っていなかった上原は驚きを隠せなかった。
「そんなに驚かなくても……」
「まさか会長が会場にいらっしゃるとは思ってなかったものですから。それと、寂しい訳ではないですよ。どちらかというと安心したという感じですよ」
「そうだね。一番の泣き虫の金井があんな表情を見せてくれるなんて無理して出した甲斐があったもんだ」
「はい。で、何か問題でもありましたか?」
 上原は面倒くさがりの会長が会場へ足を運ぶほどの問題が発生したのだと確信しての問いかけだった。
「話が早くて助かるよ。でも、こんなところで話す内容じゃないんでね、場所変えようか」
 珍しく、本当に珍しく真剣な表情の会長をみて、上原は息を呑んだ。
(……私をスカウトしに来た時のような雰囲気ね……)
「分かりました」
 上原と会長はそのまま会場をでて、夜の闇に消えていった。


『エンジェルカップ』13日目 第三試合 
 楠木悠里(龍刃道場)vsキューティ金井(龍刃道場)



 同門対決。
 富沢が金井サイドに、永原が楠木サイドにセコンドとして陣取っていた。

「美加、持てる全てを使って勝ちにいくのよ、いい?」
「う、うん」
「悠里は勝てると思ってるはずだけど、こっちだって成長してるってことを思い知らせてやらないといけないからね。頑張んのよ」
「わかったよ」


「悠里、美加の爆発力と柔軟性を舐めちゃ駄目だよ」
「わかってる」
「それに欲張っちゃ駄目だよ? どんな勝ち方でも勝ちは勝ち、この星ひとつで決勝への道がかかってるんだから」
「わかってる……つもりだよ」


 両陣営のやり取りが終わるのを待っていたかのタイミングで開始のゴングが鳴った。

「金井ぃーーー!!」
「ふぇぇえ」
 珍しく開始早々にショルダータックルで突っこんでいく楠木。
 立ち上がりはゆっくりだと思っていた金井は慌てるが、この大会は金井を大きく成長させていた。
「えーーーいっ!!」
 咄嗟にドロップキックで迎撃を選択したのだ。
 見事に楠木の肩と相打ち。でも、勢いを殺しきれなかった為に、倒れこんだところをハーフボストンで取られられる。
「うっ……」
 楠木のパワーで締め上げられるものの泣き言はもう言わない。幸い自陣近いので、痛みを堪えてジリジリとロープまで腕の力だけで辿り着く。
 ロープブレイク。
 アッサリと技を解いた楠木だが、ロープを使って何とか立ち上がった金井に対して逆水平を繰り出す。

「っ!!」
 破裂音とともに金井の体がロープへ食い込む。
 痛いと叫ぶことすら忘れるほどの衝撃が金井の胸に突き刺さった。
 それが2発、3発と続けざまに飛んでくる。
「レフリー!! ちょっと、楠木!! ロープブレイクでしょう! 離れなさいよ!!」
 セコンドの富沢がと飛び出しそうな勢いでレフリーに抗議するとともに、楠木に食って掛かる。
 だが、そんなこともお構い無しに4発、5発と叩き込む楠木。
「ど、ど、どっかいけーーー!!」
 レフリーの制止で、6発目の動作が緩慢になったところに金井がロープからずり落ちながらも楠木の膝に向かって低空ドロップキックを発射。
「があぁぁ!!」
 不意をついた一撃は間合いをとる時間を十分に稼いでくれた。
 這うようにしてリングの中央へ逃げ出す金井、その胸元は真っ赤に晴れ上がっており、目に涙も溜めていた。
 それでも、今日は簡単に諦められる試合ではないと踏ん張る。
「QTは、そんな力任せの技じゃまけないもんね!! お返しいくよー」
 観客へのアピールを忘れずに行うと、立ち上がった楠木目がけて突っこんで思いっきり飛び上がった。
 バネを生かした打点の高いドロップキックだ。高さは楠木の頭を打ち抜くにも十分な高さにあった。
(防御して捕まえる!!)
 楠木はスピードのある金井を早く消耗させるべく安全策で捕まえにいこうとした。腕をクロスして防御体勢をとったのだ。
 しかし、予想に反して金井のドロップキックが来ない。
 金井は、着地直前まで体を伸ばさなかったのだ。ギリギリまで引きつけての低空ドロップキックを繰り出したのだ。
 完全に意識が上半身に向いていた楠木はその一撃を無防備に喰らってしまう。
「どうだぁ!!」
 金井の大奮闘と今までに見ない金井の技の引き出しに盛り上がる会場。
 ディアナとの一戦で引き出されていた金井の才能が開花を見せ始めていた。

 だが、才能の開花でいえば楠木も金井に劣るものではなかった。
 熱くなっていた頭が金井の攻撃で急速に冷やされて、冷静になるとジリジリと間合いを詰めることにした。
 勢いに乗る金井は投げあいでも負けないと楠木と組み合うことも怯まなかった。
 が、後の先をとる楠木にことごとく返される始末。

 ブレーンバスターをかければブレーンバスターで。
 バックドロップでバックを取っても、エルボーで潰され。
 投げが不利だとエルボーで仕切り直しを狙うも真っ向から受け止められて最後には一発で反対によろめかされる。

「……うぅぅ」
「金井!! そこまでなのか!!」
 空中戦を嫌い、力比べからのクラッシクなプロレスに引きずり込みながら楠木は吼える。
 しかし、予想外に踏ん張る金井に活路が見出せないでいた。
 というのも、楠木としても流れを完全に持ってくるのは大き目の技を繰り出したい。その選択がDDTになるので躊躇っていたのだ。
「ま、負けないもん!!」
 腕力というよりは体の柔軟性や力を上手く伝達できる基礎力が金井を踏ん張らせていた。
「せいっ!!」
 金井の反撃を利用して投げ飛ばす楠木。背中をしこたま打った金井はす直ぐには起き上がれないだろと自身は反対側のロープへと走る。
 DDTが危険ならば、ラリアットで動きを止めるしかない。
 楠木は少し焦っていたのだろう。冷静であれば金井の髪をつかんで起し、ショートレンジの龍牙ラリアットをぶち込めばよかったのだ。
 それが、あまりにも踏ん張る金井に釣られるように未完の大技ユーリスターハンマーを選択してしまったのだ。
「金井ぃ!!!」
 金井の起き上がり様に重ねるように、隙の大きい右腕を振りかぶって突っこんでいく。
「美加ぁ!! 踏ん張りどころよ!!」
 コーナーから富沢の指示に金井は敏感に反応した。
「やああぁぁぁぁぁ!!」
 楠木からそれた位置にドロップキックを放つ金井。
「もらったぁ!!」
「悠里、だめぇぇぇぇ!!」
 今度は永原の声が響が時既に遅い。
 宙に浮いた金井を叩き落すために突っこんだ楠木にするりと金井の腕が伸びて絡まった。

 楠木の体が宙に浮き、そして叩きつけられた。

 楠木は自分の突っこんだ勢いで金井のジャンピングネックブリーカーをアシストしてしまったのだ。
 会場のボルテージが一気に跳ね上がった。
 金井のまさかの反撃、しかも華麗に相手のパワーを利用しての返し技は美しく力強かった。
 金井は自分の体を引きずりながら、なんとかカバーにいく。
 カウントがゆっくりと感じられるほど、二人の意識は朦朧としていたが先に靄が取れたのは楠木だった。
 ギリギリ2.8で肩を上げることに成功するがそこまで。
 再び、カウントが数えられる。

「……力みすぎたかも」
 自分のパワーが逆に利用されることなど考えもしていなかった楠木は思いのほかダメージが残っていた。
 一方、金井も目がぐるぐる回っている。
 恐らく、このままギリギリで立てば楠木のKO勝ちで幕が下りることは明白だったが、楠木の中でまだ何か物足りないものがあった。
(美加の必殺技から逃げてるよね……)
 その思いがあった。現にDDTを出していないのだ。
 他団体の選手ならいざ知らず、仲間の持ち味を引き出せずにこのまま終わるのかという想い。
 だが、金井のノーザンライトは必殺の領域にまで成長しつつあるのだ。それを喰らってなお楠木は立てるのだろうか?
(社長も龍子さんも言ってたよね。この大会は勝ち負けなんて関係ないって。なら、私の選択肢は一つしかない!!)

「うおぉぉぉぉ!!」
 楠木は雄たけびを上げて、カウント7で立ち上がる。

「金井!! お前の本気はそこまでか!? 私はまだまだだ!!」
 そういって金井の髪を掴み引き起こし、その首を脇に抱える。
 リング中央に向かってDDTをぶっ放せば、その後はウインドミルの絶好のポジションになる。
「いっくぞぉー!!」
 楠木は片手を上げて観客にアピールをすると一気に引っこ抜こうとしたが、何故か持ち上がらない。
「な、なに!?」
「う、うーうー」
 金井が唸りながら踏ん張っているのだ。
「美加!! 意地見せなさいよ!!」
 富沢の激が飛ぶ。
「悠里!! 踏ん張れ!! 喰らったら洒落になんないよ!!」
 こちらも永原の指示がでる。
「おらっ!!」
 楠木が膝を入れる。金井の踏ん張りを崩したいのだ。
 しかし、目に涙を溜めながらも金井の力は抜けない。
「力比べなら負け――なっ!!」
 楠木が力勝負で負けるわけにはいかないと、一瞬、力を入れなおそうとした隙に金井の体が反り返った。
「やあぁぁ!!」
 綺麗なアーチを描いてフォールに移るが、金井の背後にはスペースが少なかった。
 楠木は自分の肺から空気が全部出て行ったかのような錯覚に見舞われるほどの衝撃で体の自由が殆ど利かなかった。

 1!

 2!!

 3カウント目を叩く寸前でレフリーが止めてしまった。
 会場は完全に3カウントで金井コールの大合唱だ。
 しかし、レフリーは金井の肩を叩き、楠木がロープブレイクしていることを告げる。
「そ、そんなぁ……」
「……はぁはぁ……(思っていた以上の威力だ……)」
 金井は渾身の一撃がまさかの不発で放心状態、一方楠木は冷汗をかいていた。
 無意識に伸びた足がロープに辛うじて掛かっていたのだ。金井のとって投げた位置が悪かったのだ。ほんの数センチの差で天国と地獄を分けた。
 死んだと観念した楠木が反撃の狼煙を上げる。
「今度はこっちの番だ!」
 へたり込んでいる金井を再び引きずり起すと今度は掴んだまま、ショートレンジでラリアットをぶっ放す楠木。
 そして金井の首ではなく胴体に腕を回しガッチリと抱え込むとそのまま一気に体を振り上げて回転させる。
 踏ん張る気力の無くなっていた金井はそのまま楠木の立てた膝に叩きつけられた。

 九死に一生を得た楠木渾身のウインドミルが炸裂したのだった。

 ○楠木悠里(18分36秒 ウインドミル⇒体固め)キューティ金井×

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No title

悠里ちゃん決勝T進出おめでとうございます。
セミファイナルは予選で負けた渡辺さんが有力みたいですね。
リベンジ期待しています♪

え?うちの悠里?相変わらずの草食系で六角さんから器用になる特訓を受けてます。
それはまるでウ・・・・(ゴンッ!!)

悠里:もう・・・オーナーったらそれ以上言っちゃダメですよ。とにかくそちらの悠里さんも頑張って下さいね。さてと・・・伸びたオーナーを連れて帰ります♪
まったりとプレイ中・・・ではない
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