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龍刃道場の日常その8

――龍刃道場裏口

 楠木悠里は建物の影でジッと座っていた。
 何するでもなく座っているその姿を見て、龍子は声をかける事にした。自分の柄ではないとは思ったが、自分の役目ではあると思ったからだ。

「試合。根性見せたな。客も満足してったろうな」
 ぶっきらぼうな声のかけ方だった。
「……そうでしょうか?」
 ブーイングは飛んでこなかったけれど、いつものような盛り上がりもなかったと楠木は思っていたから素直には喜べなかった。
「ああ、上出来だ。もともと、私らの団体のファン層には鏡みたいな奴は受けが悪いんだ。それを相手にしてキッチリメインを務めたんだ、もっと自信をもて」
 珍しくべた褒めの龍子。これには楠木でなくとも違和感を覚えただろう。
「……あ、あの、龍子さん。私何かやっちゃいましたでしょうか?」
「あ? おいおいどうしてそうなる? 私が褒めちゃ駄目だってのか? 頑張った弟子を褒めたっていいだろう?」
「す、すいません! あまり褒められた記憶がないもので、つい」
「あーーーーっ!! やっぱ柄じゃねえか……」
 龍子が頭をボリボリと掻きながらそんなことを言った。
「でもな、ホントによくやった。自分からアイツの所にいって教えを請うたんだろ? それだけでも成長したって思ってる」
「龍子さん……」
「まあ、本来なら私や上原さんが教えてやれればよかったんだが、私らも万能じゃないんでね。あたし自身も考えさせられる部分もあったからな」
「そんな! 私は別に龍子さん達じゃ駄目だとかそんな事は思ってません!!」
 楠木は慌てて否定する。六角に師事したのは確かに龍子が組み伏せられたことで彼女の優秀さが立証されたことが一因ではあったが、決して龍子たちに不満があったわけではなかったのだから。
「分かってる。だから言ったろ? 成長が嬉しいと。逆に私や上原さんに拘ってたら怒ってたぞ」
「……」
「これは誰に聞いたわけでもない自分で感じたことだし、悠里にはまだ分からないかも知れないが言っておいてやる」
「は、はい」
「師っていうのは弟子の成長が一番の喜びで、その中でも自分を超えてくれることが最高の願いであり喜びなんだ。だから、弟子が色んなものを吸収していくことは嬉しくて仕方が無い。まあ、師事した奴に嫉妬しないとは言わないさ。だが、それ以上に弟子の成長が嬉しい。こんなことは今後一切言わないし、簡単に超えられてやるほど私は優しくはない」
「龍子さん……」
「私自身、追いかける身だからな。それに落ち込む余裕はないだろう? 大会はまだ続くんだ気を引き締めろ!」
「はいっ!!」
「よし、いい返事だ。しのぶ達が心配してたぞ、ちゃんと顔もみせて一緒に練習して来い。成長してるのはお前だけじゃないぞ?」
「はいっ!! ありがとうございます!! それでは失礼します」
 楠木は龍子に頭を下げると駆け足でジムへと向かっていった。
 そんな龍子の背後に近づく影があった。
「龍子ちゃんも青春してますねえ、うりうり~」
「な、なっ!?」
 いきなり飛び掛ってきた影は龍子の背後から彼女を抱きしめた。
「かわいいねえ。お姉さんドキドキしてきちゃったよ」
「な、な、何を!? 六角!? お前、離れろ!!」
「せいかーい。よく分かったねえ~」
 龍子が暴れるもガッチリと抱きしめて話さない六角。
「分かったも何も私にこんな馬鹿なことする奴はここには二人しかいないし、その内の1人はいきなり胸を揉むほど馬鹿じゃねー、っつーか、止めろ!! 私にその趣味はねー!!」
「いやー、今日子とは違った感触で堪らないんだけどね~」
「は・な・せ」
「ハイハイ、龍子ちゃん、そんなに怒らない」
 そういって名残惜しそうに手を離す六角。どこまで本気でどこまで冗談かつかみどころがない人物である。
「怒らせているのはお前だろうが!!」
「嫌よ嫌よも好きのうちって言うだろう?」
「言・わ・な・い。……何の用だ?っていうかその妖しい動きをやめろ!」
 六角がワキワキと手を動かしているので、身の危険を感じたのか後ずさる龍子。
「いやー何かこう手が寂しくてねえ♪」
「……」
「冗談、冗談だよ。悠里の事で相談があってね」
「悠里の?」
 六角の表情が一変したので、龍子も真剣に話しを聞くことにした。



――道場にて

「いえーい、初勝利ぃ!!」
 永原が喜びで一杯だった。
 それもそのはず、言葉通り大会初勝利をもぎ取ったのだから。
「ちづる、おめでとぉー」
「やっとか」
「おめでとう」
「ありがと、美加」
「うるさいぞ、レイ」
「悠里もありがと」
 楠木が道場に戻ってきてからすぐにこの騒ぎが始まったのだ。
 永原と金井がずっと居てたのだが、越後が近くに居て、富沢が会長に呼び出し受けていて、楠木が裏口に居ては騒ぎようが無かったのだ。
 それが、越後が社長に呼ばれ、富沢、楠木が戻ってくれば、落ち着けというのが無理な話。
「ちづる、喜ぶのもいいけど次当たるの曲者姉妹だけど大丈夫なの?」
 富沢が心配するのも無理は無く、相手は負けなしのチームで永原達とは真逆のタッグだった。
「そうだよねーあそこの団体って怖いもん」
 ライラ戦を思い出して背筋が凍ったのかブルッと震える金井。
「で、でも朝比奈さんは違うと思う……」
 少し、自信なさ気に楠木は付け加えた。
「だね。外から見てると同じヒールでもタイプが全く違うね」
 富沢が楠木の言葉をフォローするが、この流れをぶっちぎったのやはりこの人物。
「よくわかんないけど、最後はジャーマンで勝つから問題ないっ!!」
「……」
「……」
「……」
 永原の根拠のない自信はいつもながら凄いと感じる3人だった。
「あんたね~ちょっとは学習しなさいよ! 初戦といい前回といい思いっきり狙われてるでしょうが!!」
「そうだよー、QTもそれが心配だよ」
「でも、寮長もちづるも試合を重ねるたびに充実してると思うんだ」
 富沢、金井は心配と楠木はタッグの成長度を口にする。
「大丈夫ぅぅ! 寮長はあたしのこと信用してくれてるのだ! あたしはジャーマン一筋300ね――あ痛っ!!」
 ゴチンと調子に乗る永原の頭上に拳骨が落ちてきた。
 かなり痛かったのだろ。頭を抱えて蹲る永原。
「何が300年だ! どこぞの牛丼屋のつもりだ、馬鹿者!」
 いつも間にか戻ってきていた越後が永原の背後に仁王立ち。
(寮長にもツッコミを入れたい……)
(……寮長、レイちゃんから没収したアニメ見たの?)
(牛丼屋って300年も伝統があるんだ~、凄いな……)
 富沢、金井、楠木がそれぞれ思うことがあるようだが誰も口にしない。
「ん? 何だお前ら何か言いたそうだな?」
「「「何もありません!!」」」
 綺麗にハモりながら答える3人。
「まあ、引っかかりを感じるがいいだろう。あ、楠木、大丈夫なのか?」
 越後が聞いてくるのは、鏡に喰らったアンプリティアーのことだ。
「は、はい。突然のことでよく覚えてはいないんですけど、大したことないですよ」
「うっそー!? すっごい音したんだよ?」
「悠里、あんたの体は何で出来てるのよ?」
「悠里すごーい! QTだったら間違いなく病院送りだよぉ」
 楠木のトンデモ発言に同期の3人は驚きを隠せない。それは、越後も同様だったらしい。
「……そ、それならいいんだ……(龍子さんにも大概驚かされてきたが、楠木も同じなのか?)」
「ところで寮長、社長に呼ばれてたのなんだったんですか?」
 頭を押さえながら永原が聞いてくる。この大会が始まってから社長が介入することなど殆ど無かっただけだけに能天気な永原でも気になったのだろう。
「社長も富沢と同じ心配をしてたんだよ。最後の試合、悔いなく終えるためにもくれぐれも油断するなと釘を刺されたんだよ。村上姉妹は参加チームで一番強かで、私と永原が一番固いとね」
「……なるほどねぇ……一長一短ですもんね、寮長達は」
 越後の言葉に富沢が反応する。あとの二人は首を傾げるだけ。
「ああ、悔しいがそういうことだ。私も永原も頭が固い、頑固というかそういう類のものだし、分かっていても直るものでもない」
「でも、先日の一戦でも分かるように絆も一番固いですよね」
 越後の自嘲めいた言葉に富沢がフォローを入れる。ただ1人、外から眺めている富沢だからこそ言えた言葉だった。
「寮長!! あたし最後の試合勝ちたいです!!」
 永原が突然気合をいれて宣言してくる。
「どうした!? 永原? 気合を入れるのはいいが、空回りは駄目だぞ。相手は無敗の試合巧者だ、下手な気合は足元をすくわれる」
「それでもいいじゃないですか!! 寮長も言ったじゃないですか、あたしたちは頑固だって。だったら、とことんまで貫いてやりましょうよ!!」
「それいいかもね。ちづるの頭じゃ考えてもたかが知れてるし、公式戦に乱入してマイクパフォーマンスする馬鹿姉妹よりも凄いジャーマン馬鹿がいることを教えてやればいいよ」
「乱入とかあってもQT達が守っちゃいますよ!」
「ちづるのジャーマンと越後さんのディフェンスがあれば大丈夫ですよ。私が言うのもなんですけど、全力であたれば道は開けると思います」
(社長の言うとおりだな……皆成長している)
「寮長どうしたんですか? ちづるが馬鹿すぎて頭痛でも?」
「レイ!! どうしてそうなるんだよ!!」
「だって、あんた、脳ミソの栄養は無駄にデカイ胸に取られてるじゃん」
「取られてないし胸は関係ないだろう!!」
「ちづるズルいよねー、QTだってもうちょっと欲しいのにぃ……おっぱい」
「じゃあ、美加は次の試合で悠里に勝てばいいんだよ。勝てば胸が大きくなるかもよ」
「ほんと!?」
「ちょ、ちょっと、ちづる!! いい加減なこと言わないでよ」
「ホントホント、多分、美加のおっぱい成分は悠里に取られたんだよ」
「えー、悠里返してー、QTのおっぱいー。返してぇー」
「え、その、あうあう……」
「あはははは!! 悠里おっかしぃー」
「レイぃー、笑ってないで助けてよ。ちづるも蹲って笑わないでよ!」
 4人が馬鹿言い合って、越後が微笑ましく、その様子を眺めている。
 
 シリアスな話だったのに、いつも間にかいつもの馬鹿騒ぎになっている。人とは違っても、自分達が自分らしくあれる環境で自分らしく振舞える。彼女達は本当に成長しているのだろう。
 次世代を担う選手がいないと散々こき下ろされてきた龍刃道場もその汚名を返上する時が来たのかもしれない。

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