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『エンジェルカップ』8日目 第五試合

「与えられた仕事をこなすとしよう」
 そう呟いてリングに向かうはTNA所属中森あずみ。
 仕事人の異名は、一撃必殺のアンクルロックに由来すると思われているし間違いないのだが、本当の意味する所は別にあるのだ。
 辣腕と業界では名高いTNAの代表が、頼りにする人間は二人おり、その一人が中森なのだ。
 興行においては、確かにスター選手は必要だが前座からメインまで同じ傾向が続いては飽きてしまう。
 どんな大好物でも同じものばかりでは飽きてしまうのだ。それを調整できるのが中森というレスラーだ。
 今回の興行で求められているのは、メインの鏡の試合をいかに際立たせて成功を収めるかという事。
 その相手は誰かと言えば、試合をこなす度に成長著しい龍刃道場の楠木悠里。その彼女と白熱した試合をというのが仕事内容で、当然のことながら勝てるなら勝てとの事。
 若手にそんな指示を出すのも酷なのだが、中森は首を横に振る事はない。困難であればあるほど中森はその仕事をやり遂げて自身の成長の糧としてきた。
 それは、取りも直さず打倒フレイア鏡という目標の為なのだ。

 8日目 第五試合
 楠木悠里(龍刃道場)vs中森あずみ(TNA)


「……」
 リング上で待つ楠木が闘志を秘めた瞳を向けてくるが、中森はさらりと視線をかわし入場する。
 意気軒昂な相手をまともに受けては被害も大きいからだった。
 会場はホームとはいえ、性質上アウェーとは言わないまでもTNA贔屓の会場ではないので声援も五分。
 時折、中森へ声援が飛んでくるのは常連のファンだろう。その声の大半が黄色い声援だった。
(さて、立ち上がりはどうしたものか……)
 中森が考えなくとも楠木が突っかかって来た。

 凄まじい破裂音のする逆水平だ。

(くっ……思っていた以上に重いな)
 中森は予想以上の攻撃に顔をしかめた。
 が、ここに来て今後の方針を固められたと言ってもいい攻撃だった。
「効かないな!!」
 威力を逃がすではなく、踏ん張りきってお返しとばかりに逆水平を打ち込んでいく中森。
 今度は楠木が顔をしかめる番だった。
 楠木にしてみれば、苦手なグラウンドに持ち込まれる前に畳み掛けたかったのである。
 その為に最初から様子見をせずに仕掛けたのだ。パワーで押し込めば、中森がチャンスを伺うべく守勢に回ると思ったからだった。
 それが、意地を張り合うかのように打ち返してきたのだから堪らない。
「負けるもんか!!」
 こうなっては楠木は引き下がるわけにはいかない。
 朝比奈戦の焼き直しである。
 観客は俄然盛り上がる。朝比奈戦の熱戦を知っている上に、いつもクールな中森が熱くなっての打ち合いなのだ。
 盛り上がるなという方が無理である。
 5発6発と打ち合っていくと流石に中森がパワー負けしてくる。
「……(パワーでは流石に不利か……)」
 楠木の7発目のが逆水平を喰らった拍子に自らロープに走る中森。
 楠木もワンテンポ遅れて逆サイドのロープへ。
(ぶっとばす!!)
 中森がショルダータックルの姿勢を見せたことで、楠木の頭の中は正面衝突しかなかった。
「せいっ!!(甘いなっ!!)」
 ぶつかる直前に中森はサイドステップを踏んで、膝を楠木のボディに突き刺した。
「ごほっ」
 自らの勢いで中森の膝を支点に身体が半回転してリングに大の字に転がった。
 完全に不意をつかれた形だった為に、衝撃が身体の隅々に走り動きが完全に止まってしまった。
(……あっ、足をとられる!!)
 足からの激痛に耐えるべく気を張った楠木だったが、襲ってきたのは喉元への仕事人エルボーだった。
 またもや完全に裏をかかれた楠木はあまりの衝撃にリング下へと逃げた。
(どうして!?)
 呼吸もままならぬ状態で疑問が脳裏を駆け巡る。
 一撃必殺のタイミングを逃してまで、自分のスタイルを捨ててまで中森が何をしようとしているのかが分からない楠木。
 会場は中森コールが響き渡る。
 楠木は追撃を警戒するが、一向に来る気配がない。場外カウントが進む中、ギリギリまで身体を休めた楠木はカウント19でリングに戻る。
 一方の中森は悠々とコーナーにもたれ掛かり楠木のリターンを待っていた。
「さあ……試合再開といこうか……」
 そう言って静かに右手を掲げ、左手で楠木を来いと合図する。
 力比べをしようと誘っている。
 その姿勢に、会場がまたもや歓声をあげる。
「……違う」
 此処に来てずっともやもやしていた違和感がはっきりとした形で楠木の胸に湧き上がってきた。
 ファンがわかり易い形(楠木vs朝比奈戦)で会場をヒートアップさせているのだ。力と力のぶつかり合い。一見客が一番理解しやすい形。中森がいくら万能選手でスープレックスを切り札にしているといっても今日の試合は不自然すぎた。
 それに気付かなかったのは、楠木がやりやすい形であったからだろう。
 間合いを詰めない楠木に声援やら野次が飛び始める。
(気付いたか……まあ、気付いたところで私の仕事が変わるわけではないが)
 中森がスッと間合いを詰めると強烈な張り手を楠木に見舞う。
「来い」
 中森が仕掛けてガッチリと組み合う。
 表面上は取り繕ってはいたものの、楠木とまともにぶつかり合っていたせいで、いつもよりもスタミナの消耗が激しくそろそろ決めに行きたいのが本音だった。
 だからこそ、一発張って冷静さを欠かせてラリアットを誘発させたかったのだ。
 だが、その一発が余計だった。
 楠木は完全に目が覚めた。
(中森さんは極め技を主軸にしないで戦っている……どうして!?こんなスタイルはおかしい)
 リング中央で組み合った両者。
 楠木は思い切って中森に問いかけた。
「中森さん、どうして関節技を使わないんですか?」
「……使ってない訳ではないし、君にファイトスタイルについてどうこう言われる筋合いはないと思うが?」
「……それはそうなんですけど……こんな試合楽しいですか? 自分のスタイルを捨てて、全力じゃないことが楽し――」
 楠木はそこまでいって自分の言葉に愕然としてしまう。
 オーガ朝比奈がいった言葉が脳裏を掠める。

『ハッ! てめえ、この俺が手加減して勝てる相手だとでも思ってたのか?』
『てめぇみてえなナマクラでこづかれたところで、オーガ朝比奈はびくともしねえよ!』

 あの時、楠木は否定した自分は手加減などしていないと。
 それが意識的だろうが無意識だろうが、相手がそう感じたら事実そうなのだ。
 今、自分が中森に関節技を見せ技として戦われてどう思ったのか? 言葉は違えども朝比奈と同じ感覚を覚えたのではないか?

「どうした? 自分から話しかけてきてダンマリとはご挨拶だな」
「え? それは……」
「楽しいかと聞いたな? 私は言われた事をキッチリとこなすだけだ。それがプロとしての仕事だろう? そこに楽しいとかスタイルとかは割り込む余地などない」
 中森はそう言い切ると楠木を思いっきりロープへと振った。
 相手が動かないなら自分で試合を作るまでと言わんばかりである。
 楠木が返ってきたところにドロップキックを胸元にヒットさせ、グラつかせるとバックをすかずとるとジャーマンで楠木の長身を投げきった。
 カウントは2.8!!
「ふっ……これを返すとはどこまでタフなのだ?」
 中森は笑みを漏らす。その意味するところは分からないが、楠木も簡単に負けるわけにはいかない。
「ジャーマンでは負けません!! もっと強烈なのを練習で喰らってますから!!(それに私はやっとわかりました……朝比奈さんの言葉、龍子さんの言葉の意味が!)」
 楠木は両手で自分の顔を叩くと気合を入れて吼える。
「中森さん!! 私は今の貴女にだけは負けるわけにはいきません!! 貴女のためにも!私自身の為にも!!」
 今度は楠木が中森をロープへ振る。
(貰った!!)
 中森は勝利を確信した。楠木のラリアットをかわして、エクスプロイダーへと勝利の方程式が見えたのだから。
 楠木も反対側のロープへと走る!
 楠木は中森の予想通り右腕を振りかぶる。ユーリスターハンマーだ。
 中森は本当に仕事をしてしまう。楠木の右腕から目を離し、流れ作業を機械的にこなすように動いてしまった。

「ガハッ!!」

 中森の脇腹に凄まじい衝撃が走る。
 次の瞬間、押し倒される感覚が襲い、気がつけばリングに横倒しにされていた。
「中森さん、今日は私が勝たせて頂きます。次は、本当の“仕事人”中森あずみとして試合をしましょう」
 楠木が倒れている中森にそう告げると、中森の体は強引に引き起こされて脇から抱え込まれる。

 楠木のウインドミルの体勢である。

 中森は何とか脱出を試みようとするが、脇に受けたユーリスターハンマーのダメージと同じ場所を力の限り締められては踏ん張りなど効くはずも無く、体が宙を舞う。

(ラリアットという伝家の宝刀を決め技にしない人間に言われたくはないが、自分のスタイルを貫くという姿勢に関しては返す言葉はないか……)

 ゆっくりとした3カウントを聞きながら、中森は心の中でそう呟いた。


 ○楠木悠里(15分48秒 ウインドミル⇒体固め)中森あずみ×

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09 | 2017/10 | 11
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