スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

龍刃道場の日常その5

――社長室

「へえー、いい部屋だね~」
 落ち着きなくキョロキョロと周囲を見回す六角。
「それは、貧乏団体に対する嫌味か? 葉月」
 珍しく不機嫌さを隠さずに言葉を吐き出す上原。これは珍しい。
「はははは、かけてる金額の多寡じゃなく、雰囲気の問題。相変わらず刺々しいねえ~」
「刺々しくさせてるのは誰なんだ!? 葉月を呼んだのは永原達を怪我させる為じゃないぞ!! 分かってるのか!?」
「分かってる分かってる。コレ対策だろ? 眉毛ちゃん」
 頭から湯気が出そうな上原を前に飄々とした態度を崩さない六角が極め技をする振りをしてみせる。
「ま、眉毛って言うな!! どうしていつもいつも……」
 肩で息をしながら半分諦め顔の上原は言葉を失っていた。
 上原も長年この世界で生きてきて癖の多いプロモーターを相手にしてきた。そんな経験すら六角を前にしては無いも同然だった。
 新女のパンサー理沙子を除けば、上原をここまでおちょくれる人物は業界でもこの六角ぐらいにものだろう。
「そうそう心配しなさんな。あの小娘達に怪我はさせてないよ。ちょっと予習をしただけさ」
「……」
 六角は生徒の実力が分からなければ教えようがないと間接的に言っているのだ。
 バンッ

「上原さん!! 悠里達が怪我をしたって聞いたんですが!?」
 ノックもなしに飛び込んで来たのはサンダー龍子。
「おやおや? 今日子ぉ、教育がなってないんじゃないのか?」
 わざとらしくしかめっ面で、上原の肩に腕を回し、耳元で囁くように話しかける六角。
 当然、この振る舞いに頭にくるのは龍子。
「おい!! 何やってんだ!! 誰だか知らないが、上原さ――社長に失礼な真似をする……ぐっ!!」
 怒声とともに胸倉を掴んで投げ捨てようとした龍子の手首をアッサリと極めてしまう六角。
「あらぁ~~? 礼儀も知らない上に瞬間湯沸かし器なわけ? これじゃ、あたしに助けを求めてくるのも頷ける」
「な、何を言ってやがる!!」
「今日子も苦労してるなってことさ、サンダー龍子ちゃん」
 最小限の動きで龍子を組み伏せてしまう六角と黙って事の次第を眺めている上原。
 龍子は呻きながらも力技で脱出を図ろうと床でもがいているが、完全に決まった関節技から逃げ出す術などありはしない。


 数分後


「……悠里達の為の関節対策の為ですか?」
 不機嫌どころか殺気を纏い六角を睨みつけながら上原に確認を取る龍子。
 睨まれている当の六角は我関せずとソファーでくつろいでいる。
「ああ、龍子には説明するはずが葉月が予定より早く来てしまってな。すまない」
「いえ、上原さんが謝る必要はないですよ。こいつが悪いんですから!!」
 露骨な嫌悪をぶつける龍子。
「はいはい。龍子ちゃ~ん、為すすべなく組み伏せられたからって、そういう態度はよろしくないんじゃないかな~とお姉さんは思うのだよ。しかもそういうのって眉毛ちゃんにも恥をかかせちゃうよ?」
 六角は辛辣に言ってのけるが、何分言い方がふざけすぎているので、龍子も収まりがつかない。
「たった一回で何様のつもりだ! どっちが上かはっきりさせようじゃないか!! それと上原さんをふざけた呼び方で呼ぶな!!」
 完全にヒートアップする龍子だが、六角がまともに相手しないので、話が噛みあわない。
「龍子、やめろ。葉月には私が無理を言ってきてもらったんだ。お客様だ。礼を尽くせ」
 上原が仕方なく二人の間に割ってはいる。
 龍子も上原に言われればひくしかないので渋々だが矛を収めた。
「へぇ~、ちゃんと社長してるんだ? 理沙子が見たら驚くだろうね~」
「理沙子は驚きはしないさ。葉月が世界を放浪するから私と会ってないだけだろう?」
「それもそうか……で、さっきのどの小娘を鍛えればいいんだい?」
「悠里、楠木悠里。一番大きい子だよ」
「あぁ……ありゃ駄目だ、今日子。外せないリミッターを持ってるような奴は、この世界じゃ生きていけない」
「なんだと!?」
「止めろ、龍子」
「けど……」
「いいから」
 六角の情け容赦ない評価は真っ当なものであり、一度の手合わせで欠点を言い当てるのは流石としか言いようが無かった。
 龍子にしても、わかってはいるが、こうもハッキリと赤の他人に自分の弟子の欠点を指摘されるのは面白くなかったのだろう。レスラー失格とまで言われれば尚更。
「葉月、その件は大丈夫だ。それよりも仕事をして欲しい」
「まあ、仕事って言われればやるけどさ。どうも納得がいかないね~。で、時間は1年はくれるのかい?」
「1週間」
「はい? よく聞こえなかったんだが、もう一度言ってくれないか?」
 今まで何を言っても動じる事無く振舞っていた六角がソファから身を起こし聞きなおす。
「5日間」
「おいおい、さっきより更に短くなってるじゃないか! 今日子も一朝一夕で身につくものじゃないって知ってるだろ? こういうのは積み重ねた時間が大事なんだぞ」
「分かっているさ。何も一から十までとは思ってない。名伯楽の葉月にその土台を組んで欲しいと言っているんだ」
 一線級の攻防を肌で感じさせて欲しいというのが上原の依頼だった。
「まあ、そういうことなら出来なくもないけど、いいのかい? 下手すれば苦手意識だけが突出しちまう可能性も否定できないぞ」
「そのあたりは大丈夫だと思う。鍛錬においては徹底的にやってきたつもりだ。思い切りやってくれて構わない」
「そこまで言うならやっても構わないが、約束の報酬は大丈夫なのかい? 古い付き合いとは言え、ビジネスに私情は挟まないよ」
 やれやれと肩をすくめると、条件を確認すべく指3本立てて聞いてくる六角。
「……私も団体の代表だ……二言はない」
 何故か顔を赤らめながら、呻く様に返事をする上原。どうやら、色々とあるのだろう。
 龍子は口を挟みたかったが、六角に賓客の礼をとらなければならないのであれば上原がいいと言えばそれまでである。

――道場にて

「改めて紹介しよう。臨時コーチの六角葉月さんだ。メインは楠木を指導してもらうが、他の皆も普段の練習よりも得られる物が沢山あると思う。盗めるものはどんどん盗め」
 上原の紹介を受けて、一歩前に出て皆の顔を見渡すと一呼吸置いて言葉を吐き出した。
「よろしくしなくていいから。手取り足取りの指導なんてする気もないから。こっちもまだ現役なんでね、商売道具を簡単にくれてやる訳にはいかないよ。欲しけりゃ奪い取りな」
「なっ!?」
「え?」
「はい?」
「どういうこと?」
「ん?」
「そんな……」
 六角の爆弾発言に、龍子、越後、富沢、金井、永原、楠木が驚きの声をあげた。
「はあぁぁ……(葉月は変わらないな……)」
 固まる6人と放言した六角を溜息をつきながら見つめるのは上原だった。
「あー、一つだけ教えとこうかね。社長様の七光りのお陰でアンタ達はあたしの技術を間近で見る事が出来るんだ。ただ飯ぐらいの役立たずと思われたくないなら、1つでも2つでも何かを物にするんだね。それじゃ、解散」
 一方的に終了と告げて、道場から出て行く六角。
 それを呆然と見送る龍刃道場の面々だったが、予想通り一番最初にキレたのは龍子だった。
 上原に釘を刺されていたのだが、あまりな物言いに我慢の限界だったのだろう。

「ちょっと、待てよ」
 完全に戦闘モードの龍子を見て他のメンバーは一歩下がる。巻き添えを恐れての事だろう。短気な龍子が実際に見境なしになるのは稀なのだが、六角は龍子の神経を逆なでしていた。まあ、少し前の一件もその要因でもあった。
「ん~? 龍子ちゃん、どうした? 上原お姉ちゃんに泣きつかなくていいのかい?」
「!!」
 ブチッという音が聞こえたのは錯覚でも何でも無かった。
 龍子の周りから全員避難したのがその証拠だろう。
「……リングで手合わせ願えないか? 六角さん」
「ああ、構わないよ。人払いしたほうがいいんじゃないのかい? 立場ってものがさ、ねえ? 龍子ちゃん」
 龍子の目が完全に据わっているのを見ても、六角は挑発するのを辞めない。
 誰もが、リングで凄惨な出来事が起きてしまうと感じた。金井などは半分泣いているし、越後ですら背筋が凍る思いをしているのだろう言葉を発することが出来ないでいた。
「……構いません、すぐにお願いします」
 龍子はそう告げると一足先にリングへと上がった。
 それを追って六角もリングへと向かい、上がる直前に上原へ声をかけた。
「今日子、レフリー頼むよ」そういって片目をつぶってみせた。
(全く、相変わらず無茶をする……)
「わかった。双方が怪我をしそうだと感じたら問答無用で止めるからな。龍子もいいな?」
「はいはい。お任せしますよ~」
「……心得ています」
 上原の忠告に両者が頷いたところで、上原が開始の合図をした。

 レディー、ファイッ!!

 先に仕掛けたのは龍子。
 踏み込み深く、低空タックルを仕掛けたのだ。その踏み込み速度たるや、目を疑いたくなるような異常な速さだった。
 迎撃に六角が出した膝をくぐりぬけ、スピアーよろしく突っ込んだのだ。
 普通であれば、これで終わり。マウントポジションになってやりたい放題なのだから。
 が、龍子が規格外であるように、六角もまた規格外だった。
「があっ!!」
 腕の痛みに呻く龍子。 
 アッサリと倒されたと思ったのもつかの間、ホンの数秒で上下が入れ替わって、腕十字を決めてしまっていたのだ。
 見ているほうは何がどうなったのか分かっていなかった。わかるのは六角の異様なまでの強さだけ。
「今日子、止めないのかい?」
 六角が状況を静観している上原に催促をした。このままでは腕を折ってしまうからと目で訴える。
「私には完全に決まっているようには見えないが?」
 上原の指摘は正しいようで正しくはない。龍子の腕が完全に伸びきっていないというだけで、その最後の止めは六角が敢えてとめているはずだったから。
「これはあたしの遊び部分だ。わからない今日子じゃないだろう?」
「ああ、わかっているよ。でも、龍子のこともわかっているつもりだ」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
 上原の言葉に応えるかのように雄叫びを上げると、決められている腕に力を込め、身体をずらし片膝をついて六角を持ち上げようとする。
 腕はパンプアップされた状態に近く、破ちきれんばかりになった。
「おいおい、無茶苦茶じゃないか? 怪我でもしたらどうするんだ全く!!」
 六角は持ち上げられる驚きよりも、龍子が無茶している事に腹を立てたようすで、すかさず三角締めに切り替えた。
 流石にこうなってしまっては、上原も止めるしかなくなり、二人の間に身体を割り込ませた。
「龍子、終わりだ。葉月も外してくれ」

――数日後(大会7日目)

 数日前の出来事で六角の実力が龍子を比較対象にして若手にとってわかりやすく判明した。
 それを敏感に感じ取ったのは意外にも富沢だった。
 その動きに触発されてか、越後をはじめとして金井、永原が時間をみては六角に指導を請うようになった。
 金井は基礎練習を泣きついて教えてもらい、一方で越後、永原は、隙をみてはハンデキャップ戦を挑んで、きっちり関節技に対する免疫を自分達の身体にしみ込ませていた。
「葉月姐さん! 必殺技を教えて下さい!!」
「なーんか、お姉さんの字が違うように思うんだけど?」
「一緒ですって! それより、必殺技を是非!!」
「昨日言っただろ? 欲しけりゃ盗めって」
「いや、盗めもなにも姐さん基本的に何もしないじゃん」
「ん? やる気が起きないからね~」
 意外に頑張る富沢だが、最初から必殺技とか言っている時点でアプローチの方向が違っているように感じるのだが、それもらしいといえばらしいので誰も注意しない。
 まあ、六角も簡単に折れないのでずっと平行線なのだ。
「それじゃあ、姐さんこれならどう?」
 差し出されたのは一枚の写真。どうやら上原の写真のようだが……。
「おぉ? 富沢くん。君とは気が合いそうだよ。必殺技の練習に入ろうか」
「よっし!! お願いしますっ!!」
 怪しいやりとりをしている六角達をジムの端で見つめているのは楠木悠里。
 六角が本来真っ先に指導しないといけない人物である。
「どうした? 悠里、教えを請いにいかないのか?」
 楠木に声をかけるのは昨日六角にしてやられた龍子だった。
「龍子さん……」
「アイツの強さ、技術は本物だ。やりあった私が言ってるんだ間違いない。悠里にプラスになることも多いだろう」
「それは分かっています。でも、あの物言いやあの振る舞いは私には合いません。私には上原社長や龍子さんの教えがありますので、あの人の教えは必要ありません!!」
 楠木は珍しく感情的になって、龍子に背を向けて自分のトレーニングを開始する。
「……そうか(まずったかな……私の負けがなにか引きずらせているのか?)……まあ、無理にとは言わないが気が向けば行くといい」
「……気が向けばそうします」
 どうもらしくない楠木を見つめらがらもどうしていいのか分からず龍子は頭をかきながらその場を後にした。

⇒⇒⇒大会7日目の試合へ

コメントの投稿

非公開コメント

まったりとプレイ中・・・ではない
Web 恋姫†無想 張遼を育成中!
興行日程
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィールなのか?

上原 柊

Author:上原 柊
画像は、玉倉かほ様の了承を得て貼らせて頂いております。

胡蝶の夢

誰も読んでないと思うけど、恋姫話は現在↑のところで書いてます。無謀もいいとこですが、、まあいけるとこまで行くぜって感じで。

FC2カウンター
なにかあれば、コチラ
拍手する
検定
なんとなくやってみた。頑張った。
最新記事
最新コメント
リンク
なにわんGP楽しかったですねー
なにわんGP応援中!
ζ'ヮ')ζ<よみますよぉー
『4ページマンガ最前線』 | 最前線
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。