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『エンジェルカップ』3日目 第三試合

――試合前日

「チッ……ウドの大木と試合かよ。面倒クセェー」
 ペッと唾を吐き悪態をつくライラ。囲み取材の記者達は眉をひそめた。
「で、まともな取材も出来ネェならとっとと帰んな!! 翌日の一面はウドの大木がポンコツになった記事でも書くんだな、ヒャーハッハッハッハッハ!!」
 捨て台詞を吐いてさっさと帰っていくライラを見送る記者達はどうしたものかと思案に暮れていると反対側の通路からサンダー龍子がやってきた。記者達は地獄に仏とばかりに駆け寄っていった。

「おいおい、今回の主役は若手だろう? 私に取材はおかしいだろ?」
 龍子は囲んでいる記者達から逃れようとするが、記者達も手ぶらで帰る訳にはいかないから必死だった。
 強面だが普段から取材にはキッチリ対応している龍子だからこそ、記者達も期待したのだろう。それにライラの対戦相手楠木が龍子の秘蔵っ子なのは公然の秘密でもあったからというのもある。
「……記者さん達にはいつもお世話になってるからな……今回だけだぞ。で、何が聞きたいんだ?」
 記者の粘り腰に仕方なく折れたという感じで取材に応じる龍子だったが、ライラの暴言や悠里の話題になるとピクリと眉を吊り上げた。
「ライラ如きに潰されるようなら、そこまでの器だったってことさ。それに対して私がどうこう言うのはおかしいだろう」
 怒りを抑えるかのように答える龍子だった。
「取材はここまでにしてくれ。私も忙しいんでね、それじゃ」
 記者の囲いをさっさと抜け出して去っていく龍子。それを引き止める記者は誰も居なかった。これ以上、話して龍の逆鱗に触れる事はないと思ったんだろう。


『エンジェルカップ』3日目 第三試合 楠木悠里(龍刃道場)vsライラ神威(百鬼夜行)

――試合当日

「悠里、ガチガチになってない? そんなんじゃ試合が面白くな……痛っ!」
「馬鹿! 余計に緊張させるような事を言う奴があるか!」
 控え室で見るからに緊張で強張った顔をしている楠木に永原がちょっかいを掛けたところに越後のゲンコツが落ちた。
「寮長ぉー、痛いですよぉ、何するんですか」
「ゲンコツなんだから痛いに決まっているだろ。どうしてお前はそう緊張感がないんだ」
「緊張感って言ったって、やる前から色々考えても忘れちゃうじゃないですか。それより、なんか、こう、ズバーッと決めちゃって、ガァーッと盛り上がる方が良くないですか?」
「……あのな……」
 能天気な永原に、越後は思わず頭を抱えてこんでしまう。
「……っ……ぷっ、あはは」
「悠里?」
「楠木?」
 突然笑い出した楠木に、永原と越後が驚いているとそこに上原が入ってきた。
「おや? 楽しそうじゃないか。少し様子を見に来たんだが余計なお世話だったかな?」
「社長!」
「上原さ……アイタ! 寮長がまた殴ったー」
「社長を気安く呼ぶなとアレほど注意しただろ! ケジメをつけろ! ケジメを!」
 生真面目な越後が永原を注意しているのを見ながら苦笑を浮かべる上原が、楠木に振り返り声をかけた。
「悠里、難しく考えるなよ。ちづる程とは言わないが気負わずに頑張ってみろ」
「はいっ! ありがとうございます」
 楠木が立ち上がって頭を下げた。
 その時を見計らったかのように、試合が始まると会場のスタッフが呼びにきた。
 上原、越後、永原が見送る中、楠木はリングへと向かった。
「悠里、無理してるね……」
「社長、良かったんですか? 永原じゃないですが、自分も楠木は無理してると思います。もう少し何かアドバイスしてやっても良かったのではないでしょうか?」
「……自分で気付かないといけないこともある。越後もそう思ったから何も言ってないのだろう?」
「はい。まあ、中には1から教えないといけない奴もいますが」
 越後が永原を睨みながら言っているのだが、言われているはずの本人は何処吹く風と知らぬ振りをしていた。
「しのぶは良く皆を見ているな。その内、私の仕事がなくなりそうだな」
「そ、そんなことはありません! 社長のように上手く指導できませんし、それに……自分には社長の見よう見真似でしかありませんから」
「えー、嘘だー。寮長、上原さんより厳しいじゃん! あいたぁー! またぶったー」
「だから、社長と呼べと言っているだろう!」
「じゃれ合うのはそれぐらいにしておけ」
 やんちゃな妹達を見つめるようにしていた上原だが、越後の言い分に少し納得がいかないようで渋い顔をしていた。
 それを怒りと捕らえたのか、越後が平謝りをする。
「す、すいません! 気をつけます。永原お前も謝れ!!」
「えー!?」
「『えー!?』じゃない!!」
「しのぶ、別に怒ってる訳じゃない。私も龍子もしのぶを教育係と見てないぞ。私達を超えてくれると期待してるんだがな……今回がそのステップになればと思ってる」
「社長……」
「悠里もなんだが、しのぶも私の期待を裏切らないと信じている」
 上原はそう言うと主役の居なくなった控え室を後にした。

 その頃、楠木は血塗れになっていた。

「ヒャーハッハッハッハッハ!! 意外と頑丈じゃねぇかよ」
 必死に防御する楠木を嘲笑いながら、鉄パイプを振り下ろしていた。
 会場も最初はブーイングの嵐だったのだが、楠木が血だるまになり周囲に血が飛び散ると二人の周囲から次第に声が消えていった。
 今は、会場にはライラの哄笑と鉄パイプが肉を叩く音だけが響いていた。
「なんだ? 急に静かになったな? 対戦相手もデクなら観客もデクかよ」
 つまらなさそうに吐き捨てるとライラは持っていた鉄パイプを大きく振りかぶると止めとばかりに楠木に叩きつけるのと同時に近くにいた女性ファンの悲鳴が響いた。
 パイプ椅子が破損して、ネックレスの様に楠木にぶら下がっていた。
「もっと楽しませてくれると思ったんだけどな、期待外れもいいところだぜ」
 ライラが悠々とリングに戻ろうと歩いているとリングサイドに座っているサンダー龍子と目が合った。
「ハッハッハッハ!! これは面白れぇ御仁がいるじゃネエかよ」
 ライラはリングに戻るのを辞めると龍子の下に歩いてきた。リング上ではレフリーが大の字になって倒れており、ライラにしてみれば楠木を料理した今急ぐ事もないと判断したのだろう。
「よぉ。最強の龍と呼び声が高いサンダー龍子さんじゃないですか? 今日は楽しんで頂けましたか?」
「……」
 似合わない敬語を使う事で相手を小馬鹿にするライラに対し、無言を貫く龍子。
「ハハッ! どうした? ビビって声もでねえのか?」
「……」
「最強だとか謂れても、弟子があの通りのデクじゃ師もしれてるってもんだぜ。団体自体傾いてるって噂だからな、糞みてえな社長がいるんだろうぜ。ヒャーハッハッハッハ!!」
「……ぇぞ」
「あぁあん? 聞こえね……え……よ……」
「うるせぇって言ってんだよ。ピチークパーチクうるせえヒヨコだな」
 龍子がその場で立ち上がり、ライラを睨みつける。
 背筋が凍るようなという言葉がピッタリだった。
 粋がっていたライラが無意識に数歩下がったのが証拠だった。完全にのまれていた。
 ポケットに手を入れたままだったが、ライラは構えてしまった。
「や、やるってのかよ?」
「どうしてそうなる?」
「くっ……」
 ライラは完全に気圧されているのだが、引くに引けないので手近にいた観客をふっとばし、パイプ椅子を再び手に取る。
 龍子はゆっくりと一歩一歩ライラに近づくが、ライラがその分下がる為距離が一向に縮まらない。
「……ん?」
 龍子は視界の端で動く影を捉えた。その場所は楠木が倒れていた場所だった。
 気になった龍子は視線をそちらに向ける。ライラなど歯牙にも掛からない存在ゆえの行動だったのだろうが、それがライラのプライドを刺激した。
「何、余所見してんだよ! ゴラァ!」
 パイプ椅子の角を龍子に叩きつけた。避ける間もなくというか、避けようともせずに龍子はまともに攻撃を受けた。
 額がパックリと割れたのだろう。顔の右半分が鮮血に覆われる。
「ザマァネェな!!」
 ライラが調子に乗って2撃目を繰り出すがいとも簡単に片手でパイプ椅子を掴まれてしまう。ライラが両手で取り返そうとするがビクともせず、龍子の腕の一振りで凶器を奪われる。
「……おい、ヒヨコ。これは処分しておいてやるよ」
 そういうと龍子は畳まれた状態のパイプ椅子を両手で掴むとニーリフトの要領で一撃を叩き込み真っ二つに折りたたんでしまった。
「おい! レフリー!! いい加減起きて仕事しろよ」
 小さくなったパイプ椅子をリングに放り込むとのびているレフリーに声を掛けた。
 レフリーは頭を振って立ちがあるとカウントを数え始めた。
「逃げるのかよ!」
「……勘違いするな。お前の相手は私じゃない」
「何だと!?」
「そうだな……どうしても早死にしたいなら、アイツに勝てたら相手をしてやってもいいぞ」
 龍子が楠木が倒れているあたりを指差し、ライラを見下すように条件を突きつける。
「はあ? 何言ってやがる? お前の弟子はもう立ち上がれネエよ!! オレがリングに戻るだけで終わるんだぞ?」
「戻れたらな」
「ハッ!! 面白れえ冗談だ! さっきので頭がイカれたか?」
 ライラは龍子が指差す方向を見向きもせずに吐き捨てる。楠木が起き上がれるはずがないと思っているライラは龍子に背を向けてリングに戻ろうとした。
 その瞬間、猛烈なタックルを受けて吹き飛んだ。
「なっ!?」
 ライラの中で想定外の方向と相手からの攻撃に、為すすべなくまともに攻撃を受けてしまった。
「ライラァ!! お前の相手は私だ!!」
 血染めの身体でショルダータックルを決めた楠木がダウンしたライラを無理やり起こしに掛かる。
 完全に不意をつかれたライラは、受身が甘くなってしまい畳み掛けてくる楠木を押し退けられないでいた。
 ブレーンバスターが1発、2発と連発していく。場外でのダメージはリング上の比ではなく、体にそのダメージを蓄積していくがライラのプライドと意地が楠木の攻撃を断ち切らせる。
「調子に乗るな!! 死にぞこないがぁ!!」
 力づくで楠木を振りほどくと割れた額目がけてナックルパートを打ち込むライラ。
「ぐっ……その程度、効かない!!」
 ふらつく楠木だが、倒れる気配はない。それどころかエルボーで反撃をしていく。
「テメェ! ふざけんな!!」
「お…お前こそ……龍子さんに……怪我させて……許さないっ!!」
 最初は3発やられる間に1発程度だったが、段々と反撃の回数が増え、いつの間にか互角に打ち合っていた。
(こ、こいつ……どこまで頑丈なんだよ)
 ライラもスタミナに自信はあったが、流血した楠木がここまでやるとは思っていなかったようで驚きを隠せない。
 とはいっても、怒りのアドレナリンも無限ではなく楠木の膝がガクンと折れた。勝負どころを見逃さないライラはここぞとばかりに止めを刺そうとした。
「いい加減にくたばりやがれぇ!!」
「!!」
 体勢を崩している楠木に向かって放つ一撃は、大きく振りかぶってからの躊躇なく振りぬく非情なラリアット。
 本能からなのかライラが大振りした瞬間に、震える膝に力を入れて楠木も相打ち覚悟のラリアットを放った。

「ガハッ……」
「ぐふっ……」

 ラリアットの相打ち。
 楠木の逆転かと思われたのだが、半呼吸だけライラのラリアットが早く楠木を捉えていた。ライラは楠木の轟腕を喰らいながらも自身の腕を強引に振りぬいた。
 これまで倒れることなく踏ん張っていた楠木だったが、これは堪え切れなかった。もんどりうって倒れて動かなくなる。
「ハァハァ……手間かけさせやがって糞が!!」
 ピクリともしない楠木の頭を踏みつけながら吐き捨てた。

 14……15……

「ケッ……流石に戻らネエとヤバイな」
 ライラは倒れる楠木を尻目にリングへ重い足取りで戻り始める。
 静まり返っていた会場も楠木の大反撃にテンションを取り戻しており、あちこちから悠里コールが巻き起こっていた。
「バーカ……もう起き上がらネエよ!! 糞共が!! このライラ様の勝ちなんだよ!!」
 観客席に振り向きながら、喉を掻っ切るポーズで挑発するライラ。

 16……17……

「いつまでもコールしてやがれってんだ。オレがリングに上がればそれで終わりなんだ……よ?」
 ニヤリと笑みを浮かべてロープを掴みリングへ戻ろうとしたライラだったが、突然膝から崩れ落ちる。
 ロープを掴んで離さなかったお陰で倒れずに済んだもののロープにしがみつく形になってしまった。
「なっ……おいっ!! どうなってんだ!?」
 慌ててすぐに立とうとするが、膝に力が入らないのだろう。少々、パニックになるライラを嘲笑うかのようにカウントは淡々と数え上げられる。

 18…… 

「馬鹿野郎!! カウントを止めろ!! オレの勝ちだろうがよ!!」
 腕力だけでリングに戻る事を選択したライラは、ロープを必死に掴み体をねじ込もうとする。

 19……

「待て!! 待てっつてんだろうがぁ!!」

 ……20

 カンカンカーーーーン!!

 リング上ではレフリーが試合終了の合図をしていた。
 
「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 ゴングの後にリングに体を潜り込ませたライラは天井を仰ぎながら吼えた。
(効いてネエ……絶対に効いてネエ……最後の最後で足を滑らせただけだ……)

 リング下では、ボロボロになって意識を失っている楠木を龍子が担ぎ上げて去っていくところだった。

「……絶対に許さネエ……」
 ライラは龍子と楠木の姿が見えなくなるまでその背中を睨みつけ続けた。
 死神の大鎌は砕かれたのだ。よりにもよって龍にではなく、木偶と侮った者に。
 ライラの瞳にはどす黒い復讐の焔が燃え盛っていた。
 

△楠木悠里(8分17秒 両者リングアウト)ライラ神威△

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Author:上原 柊
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誰も読んでないと思うけど、恋姫話は現在↑のところで書いてます。無謀もいいとこですが、、まあいけるとこまで行くぜって感じで。

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