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『エンジェルカップ』初日 第七試合

『エンジェルカップ』初日 第七試合 ディアナ・ライアル vs 楠木 悠里


 次々と試合が行われていく中で、龍刃道場の代表である楠木悠里は緊張していた。

「……私にやれるのかな……」

 その表情には試合を楽しむとか自分の力試そうとかそういうものはなく、ただ、不安一色だった。

(龍子さん、怒ってたよな……)
 楠木は選抜された際に、団体のツートップである二人から言葉を貰っていた。
『おい、一つ言っておく。私は反対した。お前にはこんな大会に出る資格はない。私は全力を出さないプロレスを舐めた真似をする奴が大っ嫌いだからな!!』『悠里、頑張れよ。山篭りの成果を期待しているぞ』といったものだった。
 前者はNo.2であるサンダー龍子からで、後者は社長兼看板レスラーのブレード上原からだった。
(龍子さんは私を買いかぶっていると思う……私は手抜きできるほど強くないし、いつだって全力だから。でも、社長も庇ってくれるけれど、龍子さんの言い分を否定しないから不思議なんだ)
 楠木が考えにふけている間に、先輩の越後しのぶ組の試合が終わったようだった。パートナーは楠木と同期で練習相手でもある永原ちづるだ。
(この編成も不思議なんだよね。ちづるはシングルプレイヤー向きなのに、タッグで申請された。上原さん達の考えが分からない……)

 そうしている内にリングから永原に肩を貸して戻ってくる思いつめた表情の越後に、楠木は声をかけることが出来なかった。
 ただ、ジッと俯くだけ。
 そんな楠木の横を通り過ぎる瞬間に越後が呟く。
「自分を見失うな……」
 それは楠木に対してだったのか、それとも越後が自分への戒めだったのか。
 楠木がそれを確かめようと振り向いた時には、二人は控え室へと消えていった。
 もやもやが晴れぬまま、次の試合を眺めていたのだが気がつけば終わっていた。

 そして、楠木自身の試合が始まった。

――試合開始、数分経過

「どうしたんでスか!? 動きにキレがありませんよ!!」

 対戦相手であるディアナから挑発なのか心配なのか微妙な言葉を送られる楠木。
 もとより、スピードでこのディアナに勝とうとは思っておらず、いかに捕まえられるかが勝負であるのかは対戦カードが組まれた時に分かりきっていたこと。
 しかし、永原&越後組が負けてしまった今、団体の勢いの為にもここはどうしても落とすわけにはいかなくなってしまったが故に、慎重にと思ううちに動きその者が鈍くなってしまっていた。

「そんな事は言われなくても!!」

 ディアナにショルダータックルをブチかます楠木。
 体格差がものをいって、派手に吹き飛ぶディアナ。
 歓声が一段と大きくなって盛り上がる。

(感触が軽い?)

 不思議な感覚を覚える楠木だが、ここで少し相手を押し込めたい気持ちが先行して距離を一気に詰める。
 基本は足攻め。スピードを殺す常套手段。倒れんこんだディアナの片足を取り、ハーフボストンクラブへと入ろうとした。

「ヤッ!!」
「な、なにっ!?」

 ディアナが片足をつかまれた状態から楠木の頭目がけて蹴りを放つが、慣れない蹴りのせいかバランスが悪く、楠木が掴んでいた足を離すことで辛うじてかわす事が出来た。
 ここでも歓声があがる。
 観客も捕まってはディアナが不利なのは重々承知なので、ちょっとした攻防でも敏感に反応する。

「そう簡単には、捕まらないでス!!」
「ふう……厄介だな……」

 距離を取り戦おうとするディアナと力で押し切りたい楠木。

「さあ、来い……」

 左手を背に隠し、右手を上げ手四つを誘う楠木。
 リングの中央で堂々と相手の動きを見つめる。

「……」

 こうなっては、ディアナも応じるほかはない。異種格闘技戦なら兎も角、プロレスでそうそう離れたまま戦うことなどありえない話。
 しかも、相手は右手一本なのだ。

 ディアナッ!!ディアナッ!!ディアナッ!!

 観客席からも早々と声援が飛び、ディアナを後押しする。

「負けまセん!!」

 両手で楠木の右手に襲い掛かり体重をかけて押し込もうとするディアナ。
 徐々に押し込まれていく楠木は苦しそうな表情を浮かべる。
「いけーディアナー」「潰せー」とディアナへの声援が大勢を占める。
 更に力を込めるディアナに押し負けるように楠木が片膝をつく。

「口ほどにもないでスね!!」

 ディアナが笑みを浮かべると、楠木も笑みを返す。

「え!?」
「まだ終わってないよ……んん、っしゃー!!」

 気合一閃。
 楠木の筋肉が盛り上がると一気にディアナを押し返す。
 片膝から立ち上がり、今度は楠木が圧力をかける。
 しかし、ディアナも負けてはいない。自分が押しつぶされそうになった瞬間に力を抜き楠木バランスを崩して抜け出した。
 そして、素早く背後に回るとローリングソバットを放ち、楠木がたたらを踏んでいる間にコーナーへ素早く駆け上がった。

「とっとっと……くっそー、素早い。でも、なんとか捕ま――」

 楠木が踏ん張り素早く振り向くがこれが仇となる。
 振り返った瞬間にはすでにディアナのスワンダイブ式ドロップキックが眼前に迫っていた。

「があっ!!」

 吹き飛ばされる楠木と正反対に素早く次の行動に移っているディアナ。
 絶妙のバランス感覚と受身の巧さが、技と技の繋ぎのスピード感を増している。
 頭がふらつきながらも立ち上がった楠木が、今度こそディアナの姿を捉えると思った矢先に腿が顔面にめり込んでいた。
 スピード、高さ、角度のあるジャンピングニーパットだ。パワー不足のディアナならではの高速はかわし切れるものではなかった。

「よしっ!!」

 手ごたえを感じたディアナだったが、ここで読み違いがあった。
 楠木の予想を超える頑健さだった。

「捕まえた……」
「!?」

 決め技に移ろうとしたディアナの腕をがっしりと掴む楠木。
 動揺はしるディアナをブレーンバスターの体勢に。
 倒れこむタイプではなく、その場へ体重を乗せて落とすような感じで放たれる一撃はリングを震わせるものだった。

「きゃっ!! うぅぅ……え!?」

 背中を押さえて唸っているディアナが再び驚きの表情をつくる。
 楠木がロープの反動を利用しての低空ドロップキックを放ってきたのだ。

「きゃん!!」

 為すすべなくコーナーへ弾き飛ばされるディアナ。
 手数で言えば、圧倒的にディアナが多く攻めている時間も同様なのだが、一撃一撃が重い楠木が要所要所でディアナの流れを止めてくるのだ。
 勿論、楠木から言わせれば連続して押し込めないディアナのスピードが恨めしいとなるのだけれど、ここに来て楠木に流れが傾こうとしていた。
 背中へのダメージが抜け切らないディアナはコーナーへもたれかかりながらも起き上がるが、楠木に引っこ抜かれるように対角線に走らされる。

「ディアナー!!」

 追いかけるように串刺しラリアットを決めてくる楠木。
 受身が得意なディアナといえども、これは堪らない。
 崩れ落ちるように座り込んでしまう。

 ワァァァァ
 ユーリ!ユーリ!ユーリ!ユーリ!ユーリ!

 会場は悠里コールに包まれる。
 押し込まれていた楠木の逆襲がピークに達したと感じたのだろう。

「これで終わりだよ……」

 ディアナを起き上がらせ、中央まで引きずってくると右腕を天にかざす。
 ユーリスターハンマーの前振りである。
 ディアナは棒立ちのまま、楠木はロープへ向かって走り出すはずだったのだが、ほんの一瞬、楠木の表情に躊躇いが見て取れた。
 それも一瞬の事で余程注意深く見ていないと分からない程度だったが、それに気付いたのが三人いた。
 そんな中、誰もが楠木の勝利を確信した。ディアナが宙を舞って終わりだと。

 ユーリスタハンマーが炸裂したと思われた瞬間、楠木が天を仰いでいた。

 ディアナのフランケンシュタイナー。
 あっという間の出来事だった。
 棒立ちになっていたのは、ディアナのブラフだったのだ。ユーリスターハンマーを寸前でかわし、動揺収まらない間隙をついてのフランケンシュタイナー。
 楠木は何が起きたのか分からないままのカウント3だっただろう。

 会場水を打ったような静けさが続いたが、勝者、ディアナのコールで割れんばかりの歓声が沸き起こった。
 大歓声に元気よく応えるディアナ。その表情には疲れの色は少なく、見た目以上にディアナが試合を支配していた事が窺い知れた。

○ディアナ・ライアル(14分48秒)楠木 悠里×

 
 リング上の光景を花道の端で眺めていた龍子は苦虫を噛み潰したような表情だった。
「あいつ、駄目ですよ」
 試合終了と同時に龍子は隣に居る上原に聞こえるように呟いた。
「どうした龍子? 悠里頑張っていたじゃないか?」
「……上原さん、本気で言ってます? 上原さんも……いや、上原さんだからこそ相手の視点からのあいつを見れたんじゃないですか!?」
「……手厳しいな、龍子」
「あいつ、何も変わってませんよ。無意識の内に力をセーブしてやがる! その上、今日はフィニッシュで躊躇までしやがった!」
「すぐには変われない……いくら周りがどう言おうが本人が気付くまでな。待ってやれないのか? 期待してるんだろう?」
 上原は優しく微笑んで龍子を宥めるが、龍子にも譲れないものがあるようで、珍しく上原に反発する。
「あいつ、どこか自分より体が小さい相手を甘く見ている節があるんですよ……私や上原さんには全力でこれるくせに、金井達相手にはそれが出来ない。今日は偶々相手が付き合ってくれたからいい試合に見えただけですよ」
「悠里も自分で気付くさ。賢い子だからな、ただ今は、それ以上に優しすぎるんだよ。この大会でどう変われるか見守ってはどうだ?」
「今のあいつは嫌いです……でも、上原さんがそこまで言うなら待ってもいいです」
「……(龍子も素直じゃないな。悠里、悠里と可愛がってたんだから、本当は心配なくせに……全く、誰に似たんだか……)」
「上原さん、何か言いたそうですね?」
「いや、そんな事はない。まあ、しのぶとちづるも心配だなと思ってな」
 苦笑いを浮かべながら、半分本当半分嘘の台詞をサラリと吐けるようになった上原も素直ではないのだが、ここでは彼女にそんなことを言える人間はいなかった。
 龍子も渋々、話題を変えることにした。
「まあ、ちづるにはいい薬だったと思うし、しのぶなら私達が四の五の言わなくても分かってると思いますよ」
「……ふむ、よく見ているな」
「色々と鍛えてくれる先輩が居ますし、その上には頼りない雇用主が居ますから」
 上原の褒め言葉に、珍しく皮肉たっぷりに言い返す龍子だった。

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