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ある日のこと-2-

「龍子!! 社長を押さえろ!!」
「龍子、そこをどいてくれー!!」
「……」
 私はどうするか悩む。
 社長である柊のいう事を聞くのか?
 それとも、師匠であり姉のような存在である上原さんのいう事を聞くのか?
 二人とも私にとって大事な人であるので、苦汁の決断を迫られている。
 どんどん柊と私の距離が縮まり、その後ろの上原さんも迫るが私の決断が全てを決めそうである。
 柊の奴も昔はいい男だったのにな……



――数年前

「吉田さん、娘さんを私共の団体に預からせて頂けませんか?」
 ちょっとした出来事で知り合ったおっさんがプロレス団体の社長だったと気付いたのはこの時だった。
 わざわざ熊本くんだりまで尋ねてきて、オレ(吉田龍子)をスカウトしにきたのだ。スポーツで名を残したわけでもなく、どちらかといえば落ちこぼれに属する人間をスカウトすると聞いたときは馬鹿じゃないのかと思った。
 でも、相手の本気度はその横で一緒に頭を下げる人間を見れば一目瞭然だった。
 ブレード上原、プロレスに興味がなくともTVで見かける上に、沖縄出身という事もあり地元や九州によく興行に来ていたこともあり熊本の人間は大抵知っているのだ。
「……あの、失礼ですが、本当に娘の龍子をスカウトされにいらっしゃったのですか?」
「はい。他の誰でもなく吉田龍子さんです。小さい団体ながらもここにいる上原の活躍でそれなりの知名度を得るに至りました。そして、彼女の後継者として龍子さんに入団して頂きたい」
「……ありがとうございます。暴れん坊の娘をここまで評価頂いたのは初めてです。私としては反対する理由もありませんが、この子の将来ですので本人の判断に任せたいとおもっております。私がいては話しにくいこともあるでしょう。席を外しますので龍子と話し合ってください」
「か、母さん!!」
「龍子、一度くらい自分で自分のことを決めてみなさい。天国の父さんもそう願っているわ」
「……」
 母が予想外の答えをだし、自分自身で決めないといけない状況に追い込まれた。
 学校では何でもかんでも決め付けられて、それに反抗してきたが自分で主張した事はなかった。
 初めての決断が自分の将来を決めるって、どんな状況だよと思っていたオレは何も言葉がでなかった。

「龍子さん、改めてお願いする。俺と一緒にプロレスをしてみないか? 君なら世界一だって狙える」
「……アンタさ、どう見てもプロレスラーに見えないけど?」
「ああ、俺は背広組。プロレスが好きなだけで団体を立ち上げたプロレス馬鹿だよ。でも情熱だけは誰にも負けないぞ」
「誰がオレを指導してくれるんだよ? アンタじゃ無理だろ?」
「それは、大丈夫だ。ここにいる上原が指導にあたる。チャンピオンになったこともある素晴らしい選手だ」
 必死にオレにアピールをする姿を見ている内に段々と恐くなった。
 オレがこの期待に応えられなくなったら、この人も掌を返すに決まっている。そんなことを思ってしまったオレは心にもないことを言ってしまう。
「名選手が名コーチとは限らないし、アンタの団体なんていつ潰れるか分かったもんじゃない。そんな所へ行くわけにはいかない。母さんと暮らす為には安定した職が必要なんだ」
「くうっ……痛いところをつくね。でも――」
「社長、行きましょう」
 ずっと黙っていたブレード上原が口を開いた。
「こんな小娘に関わっている時間はありません。口先だけの人間がやっていけるほど、プロレスは甘くありません」
 斬って捨てるという表現がぴったりな表情を浮かべて、立ち上がるブレード上原は素人でも分かるぐらい怒りのオーラを纏っていた。
「あの親御さんには申し訳ありませんが、この話はここまで。私達が探しているのはチンピラじゃありません」
 このオレをチンピラ呼ばわり?
「ふざけけんな!! オレはチンピラなんかじゃ――いだだだ」
 頭に一気に血が上って、勢いよく立ち上がり上原の胸倉を摘もうとするがアッサリと阻まれる。
「そうね。チンピラ以下ね。最近はチンピラも賢くてね、自分より強い相手には逆らわないぞ。自分の力量と相手の力量が分かれば上手く立ち回れるからな」
「いででで、放しやがれ!!」
「どうして? 放せば掴みかかるでしょう? スーツにシワがいっては困るから断る」
「上原!! いいかげんにしろ!!」
「嫌です。これは正当防衛ですし、この娘は社長を馬鹿にしました。世間の事を何もも知らない小娘がです。私のことならば我慢もしましょう。今までに女だからという理由で数え切れない屈辱を受けてきましたから慣れてもいます。けれど、団体のこと即ち社長のことを馬鹿にする人間は絶対に許しません、誰であろうとも」
「ふざけんな!! 本当のことだろ!! 吹けば飛ぶような会社に雇われたいなんて誰が思うかよ!!」
「黙れ!! お前に何が分かる!? ゼロからの出発がどれほど大変なのか? 会社の大きさなんて関係ない!! 社長というのはその会社にいる従業員とその家族を背負っていくんだ。それを馬鹿にしていい人間はいないんだよ、たとえ社長本人でも許されることじゃない!! 一生背負っていかないといけないんだぞ!! その覚悟を――」

 パチーンと乾いた音が響いた。
 ブレード上原の頬が赤く腫れる。

「社長……」
「暴走しすぎだ上原、龍子さんを放せ、ほら、早く」
「……はい」
 一瞬、何が起きたのかオレは分からなかった。
 気がつけば開放されて、その場にへたり込んでいた。
「すみませんでした」
 オレとドアの向こうの母さんに対して深々と頭を下げる社長。
「吉田さん、入ってこられるのを踏みとどまって頂いてありがとうございます。娘さんへの非礼は改めて謝罪に参ります」
「龍子さん、すいません。こんなつもりではなかったんだ。上原もいつもは冷静で素晴らしい人間なんだ、誤解しないでほしい」
 最初は母さんへ、次はオレに謝罪をすると上原を連れて去っていった。

 翌日、本当に謝罪に来た時はビックリした。
 そして、オレも詫びをいれて入団の意志を告げたんだ。
 今思えば、苦いがいい思い出だな。


――それが今じゃ……

「龍子~、どいてくれ~!!」
「一つ聞くぞぉ、なんで上原さんから逃げてんだ?」
「……いいから、どいてくれ!!」
「龍子!! 社長を押さえろ!! インフルエンザの予防接種から逃げ出したんだ!!」
「ったく……、しょうもないことで逃げやがって……」
 私は上原さんの味方についた。
「社長命令だぞ! どかないと痛い目見るぞ?」
「はっ!! ふざけんなよ、そういう事は社長らしいことしてから言えって」
「なら、強行突破だ!!」
 柊が走ってくる勢いそのままにジャンピングニーで突っこんでくる。
「龍子、手加減しろよ!」
 上原さんの指示を受けて、やさしくしてやる事にする。
「ほらよっと」
「なっ!!」
 素人の技なんて大したことない。
 上体で勢いを殺し受け止めると、抱きとめる位置をずらし、そのままベアハッグへ移行。
「いだだだだだだあ、折れる、折れる、背骨折れるから!!」
「放して欲しいか?」
「も、もちろん!!」
「ってことです、上原さん」
「え!? ふぎゃ!!」
 ストンと柊の身体を下ろしたところへ仕上げは走りこんできた上原さんのフェイスクラッシャー炸裂で目標は沈黙する。

「すまないな、龍子」
「いえいえ、大したことじゃないですよ」
「一瞬、社長につくかと不安だったんだがな?」
「うーん、たまにそういうこともありますけど、上原さんが本気の時は協力してるつもりですよ」
「ん? どうした? いつになく殊勝だな?」
「そうですか? いつも殊勝に生きてるつもりですよ」
「ははは、龍子が冗談を言うとはな。私も潮時か?」
「それこそ、冗談でしょ? 上原さんには社長の面倒を見て貰わないといけませんから、逃げないで下さいよ」
「それはどうかな、社長のお守りはエースの仕事と決まってるからな、ははは」
 上原さんは、にこやかに獲物を引きずって帰っていく。
 私もそれ以上は何も言わずにその場を離れる。
(注射は私も苦手だからな、やぶ蛇になる前に退散に限る)

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上原 柊

Author:上原 柊
画像は、玉倉かほ様の了承を得て貼らせて頂いております。

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